SSブログ

巡洋艦大淀 息も絶え絶えの退避 [巡洋艦大淀]

スポンサーリンク
(adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({});



 角田上水の、「総引退避」の声で、 小淵氏らは、壁に立てかけてある防毒 マスクを素早く掴むと、みんな一斉に 退避し始めました。  角田上水には、連絡のため残るように、 号令官が命令していました。  小淵氏は、マスクを持って外に飛び 出そうとしましたが、砲術士が、「マスクが ない。」と言うので、自分の持っていた マスクを渡し、そのままタラップを駆け 上がりました。下甲板は電灯も消え、 煙が充満していました。  天井の赤黒い焔が悪魔の舌なめずりの ように這い回り、闇の底から呻き声が洩れて いました。飛び散っている屍を踏み越えて、 昇降口にやっとたどり着きましたが、苦しさの あまり死んだほうが楽になれるという思いが 脳裏をかすめました。  意識が薄くなっていたところ、艦は 再び激しい衝撃を受け、防火用の ドラム缶が、転がって来ました。  ハッとなり、夢中で中甲板を上がると、 明るい光の射し込んでいる昇降口を 見つけ、息も絶え絶えになりながら、 上甲板に這い出しました。  胸は鉛を飲んだように重苦しく、五体の 感覚はなくなっていました。呆然と見開いて いる眼の前を、急降下してくる敵機が ありました。  その翼下に、天応海岸の松が見事な枝を 差しのべていました。太陽に映えた鮮やかな 緑は、心が和む色合いでした。  背後では、敵機の銃弾が、キュンキュンと 弾け飛びました。これはいったいどうしたと いうのだろうかと感じました。そして、 角田上水が発令所に残っていることを 思い出し、早く退避するように促すことに しました。 紹介書籍:“巡洋艦「大淀」16歳の海戦 少年水兵の太平洋戦争” 著者: 小淵 守男


スポンサーリンク



nice!(0)  コメント(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。