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山口多聞 艦と運命を共にする [山口多聞]

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 山口少将は、艦と運命を共にする弊害は、
理屈としては分かっていました。

 しかし、「武人には死ねる場所と時が、天から
与えられている。それを踏みにじった時、天は
罰を下し、栄光ある死ではなく、武人らしからぬ
最期を遂げる。」と考えていました。口には
出さなかったものの、覚悟はできていました。

 幕僚は、立ち去ることができませんでした。
加来艦長は、山口少将に、「私は艦の最期を
見届けますが、司令官は海軍の宝です。再起を
はかり、いずれ連合艦隊司令長官となり、この
仇を討ってください。」といいました。

 山口少将は、「艦長が司令官なら、ここを
立ち去るかね。」とやさしく言うと、加来艦長は
押し黙りました。幕僚らは、粛然となりました。

 ここに、第十駆逐隊の阿部俊雄司令官が、
風雲から移乗してきて、退艦の説得に当たり
ましたが、きっぱりことわられました。

 山口少将と加来艦長は、一人ずつ握手し、
まるで明日会おうといった温顔で手を握り締め
ました。握手を終えた者から、静かな足取りで、
飛行甲板のポケットに歩き、垂れ下がった
ロープや縄梯子につかまり、駆逐艦の
内火艇に乗り移りました。

 先任参謀から、「何か遺品をいただけ
ませんか。」と問われた山口少将は、顎紐を
解き、被っていた戦闘帽を手渡しました。

 代わりに、先任参謀に、手拭いをくれるように
頼み、先任参謀から受け取っています。
そして、山口少将は、全員撤収したら、
飛龍を沈めることを厳命しました。


紹介書籍:山口多聞 空母「飛龍」と運命を共にした不屈の名指揮官
著者:松田 十刻(まつだ じゅっこく)


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