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駆逐艦早潮 勇者花本少尉 [駆逐艦早潮]

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 岡本氏は、花本少尉の姿が見当たらないと
分かった時、胸騒ぎをおぼえました。そして、
胸を圧迫されるような重苦しさにおそわれ
ました。

 焦る心をおさえて、内火艇の艇長に
花本少尉がどうなったのか確認しました。
艇長の話では、僚艦に到達した時には、
すでに息が絶えていたようでした。

 貴重な内火艇とはいえ、定数以上乗せる
スペースは駆逐艦にはなく、早潮艦長の
命令で、花本少尉の遺体を、内火艇に
固縛して安置し、艇とともに水葬に
付されたということでした。

 岡本氏の願い虚しく、花本少尉はついに
還りませんでした。少尉が残した愛国精神は
永遠に消えることはないだろうとして著書を
終えています。

(追記)
 岡本氏は、サイパンに帰還した桟橋で、
同郷の竹馬の友である山本信光氏に
あっています。

 岡本氏は、山本氏が海軍に入っている
ことも知らず、戦争中に日本から遠く離れた
戦地で会うは夢にも思っていませんでした。

 山本氏は、桟橋で武装解除された捕虜の
ような格好で降りてきた岡本氏を見つけ、
ただ事ではないと思い近づいてきた
ようでした。

 岡本氏は、最初人違いだと思っており、
声をかけられても合点がいかない
思いだったとしています。

 山本氏は、戦争勃発と同時に応召され、
小さな漁船で特殊任務のため、ソロモンに
きているということでした。

 翌日、山本氏が差し入れてくれたビールは、
終生忘れられない味になったとしています。

 山本氏は、岡本氏と別れた早々、ラバウルの
近海で戦死していました。岡本氏は、戦後、
山本氏の家を訪ねそのことを聞かされました。


紹介書籍:駆逐艦「神風」電探戦記
著者: 「夕雲」及川幸介、「早潮」岡本辰蔵、「神風」雨ノ宮洋之介


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