SSブログ

巡洋艦矢矧 大和撃沈 [軽巡洋艦矢矧]

スポンサーリンク
(adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({});



 駆逐艦が、水平線を超え、いよいよ漂流者の
顔面に生気がみなぎった時、駆逐艦群の
やってきた方向に一大火柱が、天に冲して
立ち上りました。

 褐色じみた黒煙が、ぐんぐん伸び上がって
いきました。その中で、両国花火のように、
火線が四方八方に飛び散りました。火薬庫の
誘爆であることは間違いありませんでした。

 あの凄烈な爆発は、駆逐艦では起こるはずは
ありませんでした。遅れて、腹にしみわたる
爆発音も、海中から響いてきました。

 「大和がやられた。」という無言のささやきが、
漂流者の間でかわされました。悲痛を耐えて、
じっと噴煙を見守っていました。特攻隊は
壊滅し、沖縄突入は、ついに挫折しました。

 大和の撃沈は、井上氏らにも影響を
与えていました。救助に来ていた駆逐艦
3隻は、「しばらく待て」の信号を発光した後、
艦首を大和の方に向けていきました。

 矢矧の乗員には、駆逐艦は一隻の配給もなく、
「しばらく待て」という信号のみが配給された
だけでした。一同は、ビルの上から突き落とされた
ようにがっかりしました。

 そして、やりきれないその心を吹き
飛ばすように、誰かが、「海ゆかば」を、
大声で元気に歌いだしました。うねりに
ゆられながら、大声で唱和すると、涙が
こぼれてきました。

 自分の心をむりやり慰めるような唱和
でしたが、海軍水兵の念仏とも言えるもの
でした。

 歌い終わると、疲れのためか、生きることを
断念するような行動を取り始めていました。


紹介書籍:重巡「最上」出撃せよ
著者: 「矢矧」井上芳太、「那智」萱嶋浩一、「熊野」左近允尚敏、最上:曾禰章、「五十鈴、摩耶」井上団平


スポンサーリンク



nice!(0)  コメント(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。