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巡洋艦矢矧 戦争という現実 [軽巡洋艦矢矧]

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 矢矧が撃沈すると、あたりの海面を、
しばし空虚な何ものかが、支配しました。

 井上氏は、呆然となって、水を蹴ることを
忘れていました。そして、角材にしがみ
ついたまま、途方もなく大きいうねりに、
揺られていました。

 うねりは、漂流している生存者を、
しだいに燃料重油の浮いているかたまりの
中に、連れ込みました。みるみるうちに、
黒い重油で汚れてしまいました。

 重油は、2cmほどの層をなしており、
広範囲に及んでいました。もったいない
燃料ですが、自分が巻き込まれ、鼻孔に
入り込むと呼吸もできなくなり、命が
なくなります、現に、黒い仏が、
あちこちにできていました。

 そこに、グラマンF6Fが、機銃掃射を
加えてきました。みな、物につかまり、
浮いているのが精一杯で、死の危地から
脱し、次の戦闘のお役に立とうという
気魄だけで、生きていました。

 それほど戦闘力を失い、漂流している
乗員を機銃掃射することは、人道上
許されることではありません。

 戦争という現実の中では、どうしようも
ないことなのかも知れませんでした。F6Fは、
執拗に機銃掃射を反復して、去って
いきました。

 井上氏は、近くに池田氏がいるのを
発見しました。池田氏は、機銃掃射が
去ってほっとしているようでしたが、
重油でひどく汚れ、顔の表情までは、
わかりませんでした。

 一時間ほど漂流してしたころ、水平線に
駆逐艦が3隻現れ、救援のために近づいて
来ました。誰もが元気づいて、重油の塊から、
抜け出そうと、焦り始めました。


紹介書籍:重巡「最上」出撃せよ
著者: 「矢矧」井上芳太、「那智」萱嶋浩一、「熊野」左近允尚敏、最上:曾禰章、「五十鈴、摩耶」井上団平


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