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巡洋艦熊野 木原大尉の脱出劇 [巡洋艦熊野]

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 左近允氏は、工作分隊長の木原大尉の話を
聞いた時、最も驚かされました。

 木原大尉は、10名ほどの部下と、右舷下方の
一室にいました。そこにいた時に、熊野はあっと
いう間に沈没しました。脱出する間もなく、
熊野は、150度位回転し、着底しました。

 水深は26mなので、木原大尉のいた区域が、
水圧で押しつぶされることはありませんでした。
空気の入った箱に入れられて沈んだようなもので
あり、丸い舷窓の厚いガラスからは、海水の層を
通った陽光が差し込んでいました。

 巡洋艦熊野で、潜水艦事故で亡くなった
佐久間艇長を思わせる光景になりました。
木原大尉は、観念して座っていました。

 しかし、部下の一人が、窓を開けようと
言い出しました。ガスのような妙な室内の
空気にあてられ、頭がぼんやりしてきていた
木原大尉は、やってみようと考えました。
生きながら埋葬された者が、墓石を
持ち上げようとする図でした。

 固く締めてあった止め金をゆるめ、窓を
開けました。海水が奔入しそうですが、
実際は室内に圧縮されていた空気が
逃げ場を得て、海面にかけあがって
いき、乗員を押し出したようでした。

 木原大尉は、夢中で海中をかき、息が
続かないと感じた頃に海面に出た
ということでした。

 機銃掃射も終わっており、すぐにボートに
拾われて上陸しましたが、地獄の三丁目から
帰還したと言ってよさそうな、木原大尉の
脱出劇でした。


紹介書籍:重巡「最上」出撃せよ
著者: 「矢矧」井上芳太、「那智」萱嶋浩一、「熊野」左近允尚敏、最上:曾禰章、「五十鈴、摩耶」井上団平


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