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海防艦205号、内地への引き上げ [海防艦205号]

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 海防艦205号では、引揚者の苦労に報いるために、
艦長の発案で、慰労会が催されました。飲み物は、
カルピスとサイダーでした。江口氏ら乗員は、一番
外側にいました。

 主婦たちは、恥ずかしさで、何もしませんでしたが、
子供たちに何かやらんかと急き立てていました。
小学生くらいの少女が、トップをきって、ダンスを
しながら歌っていました。

 お世辞にもうまいとは言えなかったとものの、国防色(緑)
の服しか見ていない、女性から隔絶されたところで生活して
いた江口氏は、少女のピンクのワンピースが艶やかに映った
と記録しています。

 翌日、日が昇ると、直ちに出稿準備に取り掛かりました。
出港して3時間くらいたったころ、艦尾に安置していた
遺体から死臭が立ってきました。灼熱の太陽の下で、
鋼鉄の艦に乗せている以上当然とも言えます。

 遺体は内地に届けるつもりでしたが、致し方なく水葬に
しました。乗員、引揚者全員で合掌して冥福をお祈り
しました。

 出発した日の夕方から強風が吹き出し、波も高くなって
きました。左の方には、不気味な黒雲が膨らんで、横に
広がって行きました。これは、熱帯性低気圧が発生した
ためでした。

 この低気圧は、台風に変わり、海防艦205号は、
この招かれざる客と一緒に内地まで行くことに
なりました。

(追記)
 江口氏は、催し物の中で、小学校4,5年生の少年が、
堂々と詩吟を行っていたことに感心していました。その時、
吟じていたのは、下記の詩で、少年の両親がこの詩を
口にしながら入植したと思われます。

男児立志出郷関 学若不成死不還 埋骨豈惟墳墓地 人間到処有青山
(大意)
 男子は、ひとたび志を立てて故郷を出たら、学が成就しないうちは
何があっても故郷に、帰ってきてはならない。
骨を埋める場所を、故郷にすることを望むものではない。
どこに行っても、墓地となる青く美しい山はあるのだから。


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