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戦艦武蔵 総員上甲板 [戦艦武蔵]

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 第十一罐室の床に、水がたまり始めました。
ちゃぷんという水音が、足元から聞こえ始め
ました。炭木兵長は、足元から聞こえる波の
音に、耳を傾けていました。

 あたりが暗いこともあり、時間の流れが遅く
感じました。速度が大幅に落ち、止まって
いると感じるような船の底にいるのは、
不安をかきたてました。

 炭木兵長をはじめとした、罐室にいた15人の
機関兵は、それぞれの思いで、沈黙して
いました。

 午後5時すぎ、猪口艦長は、肩の負傷に
眉をしかめながら、「総員上甲板」の
命令を出しました。

 この頃、旗艦の大和から、「全力をあげて、
付近の島に座礁させ、陸上砲台とせよ」
という命令がきていました。

 しかし、武蔵は到底動ける状態でありません
でした。曳航することも考えましたが、
左舷への傾斜が激しく、到底不可能
でした。

 機関科の乗員が、上甲板に上がると、硝煙の煙で、
あたりの空気が汚れていました。上弦の月も、硝煙の
煙ですさまじい色に染まって見えました。前部は、
波に洗われているので、後甲板に集まって
いました。

 ここで、副艦長から、機関科の乗員に、キングストン弁を
開けるようにと言う命令が下されました。

(追記)
 罐室の床は、グレーチングと呼ばれる鉄板が敷かれており、
その下にビジル(水と水あか)がたまる空間になって
いました。ビジルの下は装甲板であり、装甲板の
下は海でした。

 ビジルがたまる空間に、艦を自沈させるキングストン弁が
ありました。キングストン弁は、太いパイプの横に、ハンドルが
ついており、これを回すとパイプの中で海水を抑えている鉄板が
上がり、海水が噴出するという構造になっています。

 このキングストン弁に触れた人は、海軍勤務軍人でもかなり
少なく、どこにあるかも分からないという人が多かったようです。


紹介書籍:航空巡洋艦「利根」「筑摩」の死闘


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