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山口多聞 加来艦長、山口少将の訓示 [山口多聞]

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 加来艦長は、第二次攻撃隊に対し、「無傷の
空母が2隻残っている、どちらか1隻に致命傷を
与えて欲しい。我が機動部隊の仇をとってくれ。
諸君の武運を祈る。」と、訓示しました。

 赤城、加賀、蒼龍は炎上し、黒煙が空を
焦がしていました。加来艦長の目には、
その光景が映っていました。隊員は、
後ろを見ようとはしませんでした。

 飛龍は、敵機動部隊に向かって、進撃しており、
炎上する空母から遠ざかりつつありました。今、
飛龍についてきているのは、2隻の駆逐艦だけ
でした。

 続いて、山口少将が、「大変な作戦となる
だろうが、みんな力を合わせ、頑張ってくれ。」
と、一人一人の顔を脳裏に焼き付けるように
見つめました。

 搭乗員が、白いマフラーをなびかせ、間合いを
とって、一斉に敬礼しました。踵を返し、両脇に
肘をつけて、駆けてゆきました。甲板上では、
整備員が、数人がかりで、機体を支え、チョークを
外すため、翼の下に、2人ずつしゃがんでいました。

 友永大尉が、山口少将の前に歩いてきました。
そして、「司令官。色々とご迷惑をおかけしました。」と、
腰をくの字に折、バネのように、もとの直立姿勢に
戻りました。

 山口少将は、「こちらこそ感謝している。」と
返答しました。山口少将は、友永大尉が、死を
覚悟していることを悟りました。ここで、生きて
帰ってこいと言っても、笑みを浮かべて返事
しないだろうと直感しました。

 友永大尉は、自分が指揮したミッドウェー攻撃が
不首尾に終わり、第二次攻撃を要請したことが、
機動部隊壊滅につながっていると、悔いている
ようでした。


紹介書籍:山口多聞 空母「飛龍」と運命を共にした不屈の名指揮官
著者:松田 十刻(まつだ じゅっこく)


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