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駆逐艦夕雲 島が見える [駆逐艦夕雲]

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 食糧が喉を通らずむせている仲間たちを
見た及川氏は、こんな時のあの猛烈な
スコールが降ればいいのにと思いました。

 しかし、空は、一片の雲もない快晴で、
スコールは全く期待できそうにありません
でした。

 ブインに予定通り入港できれば、食糧の
制限は必要ないもの、万一を考えると、
食糧を長く持たせる必要がありました。

 10時頃になり、強い光が容赦なく照り
つけてきました。負傷にあえぐ者はもちろん、
無傷の者も、無性に水と日陰が欲しくなり
ました。

 体内の水分が全く蒸発し尽くして、
枯死寸前を思わせる暑さでした。
このような時に、スコールが見舞って
くれれば、どんなにか生気も、よみがえる
だろうと思いました。

 しかし、スコールが降ってくる
兆候はなく、「こんなことに
負けてたまるか。」と励ますしか、
ありませんでした。

 前方を見ると、黒い雲が見えました。
雲の下に行けば、スコールがあるかも
知れない。なくても日陰になるだろうと
思いながら、黒雲を見ていました。

 しかし、よく見ると、ただの黒雲では
ないように感じました。雲の中に、
一きわ黒く高い稜線らしきものが
含まれていました。

 その稜線は、何度見ても同じ姿で、
目の錯覚ではありませんでした。
黒雲の下に島があると確信した
及川氏は、「島が見える」と、
大声で叫びました。

 静かに眠っていた仲間たちは、たちまち
これに反射するように、上半身を起こし、
目をこすりながら、舷外を眺めました。

 しかし、仲間たちは、黒雲すら分からない
ようでした。


紹介書籍:駆逐艦「神風」電探戦記
著者: 「夕雲」及川幸介、「早霜」岡本辰蔵、「神風」雨ノ宮洋之介


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