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駆逐艦夕雲 ブーゲンビル島に到着 [駆逐艦夕雲]

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 仲間たちはわからないようでしたので、
及川氏は、決して見失わないように、
稜線を見据えていました。

 そこに目をやられていた北条大尉から、
「山の形は、どのように見えるか」と、
尋ねてきました。

 及川氏は、「不等辺三角のような形で、
ブインに入港する時に見慣れていますから、
ブーゲンビル島に間違いありません。」と
答えると、大尉は安心した表情で喜びました。

 ボートは、昨夜出発してから、好調を
維持しており、入港は確実でした。前方に
見える稜線は、その後も消えることなく、
次第にはっきりとその姿を浮かべ、
消えることはありませんでした。

 眼の前に見えているのが、ブーゲンビル島
だと確信しました。さらに近づくと、濃緑に
覆われた南国の島に変わっていき、すその方に、
白絹を敷いたように浜が続き、ところどころ
ひときわ高く、ヤシの茂っているのも見えて
きました。なつかしい、まぶたに描いた
ブーゲンビル島でした。

 あきらめずに、精一杯頑張り通してきた
苦労が、やっと報いられたと感じました。
押し寄せる死にたいして、元気を出せと、
不屈の敢闘を強要し、ついに打ち
勝ちました。

 海岸まで目測で2kmほどまで近づき
ました。鬱蒼と茂る島の稜線は、照りつける
炎天のもとに、静かに眠っているように
見えました。ブーゲンビル島の東海岸に
たどり着きました。

 及川氏は、司令部の桟橋に索をとるまでは、
気を緩めてはならないと、自分を引き締め
ました。そして、この判断が正しかったことを、
この直後証明するような出来事がありました。


紹介書籍:駆逐艦「神風」電探戦記
著者: 「夕雲」及川幸介、「早霜」岡本辰蔵、「神風」雨ノ宮洋之介


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