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駆逐艦夕雲 砲台に狙われる [駆逐艦夕雲]

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 砲台と見張り台を発見した及川氏は、
これが敵のものか、味方のものか判断が
つきませんでした。

 敵は、日本占領地に潜り込んで、軍に
奇襲し、戦果を上げる小部隊があり、
ブーゲンビル島にも上陸している
という情報を聞いていました。

 見張り所の位置からすると、砲台から
1kmくらいのこのボートが発見されて
いないわけはありませんでした。

 虎口に飛び込んだ、うさぎの如くで、
逃げることはできませんでした。今
乗っているボートは、敵軍のもの
なので、敵のものならば、かなり
近くまで接近できそうでした。

 一方、日本軍のものだと、敵と間違え
られる懸念がありました。今すべきは、
抵抗する意志がないことを知らせる
ことだと、考えました。

 及川氏は、艇首に立って両手を広げ、
大声を張り上げながら、徐航で砲台へと
近づいていきました。

 しかし、人影は全くなく、静寂でした。
逆に、嵐の前の静けさを思わせ、気を引き
締めました。そのまま海岸から100m
ほどまで近づきました。

 さらに呼びかけを続けると、砲台付近
から、一人の男が飛び出してきました。
越中ふんどし一つの裸の姿から、
日本兵だと直感しました。

 水際に立ち止まった男は、及川氏の
呼びかけに応答してきました。及川氏は、
状況を説明し、水を飲ましてほしいという
要望を出しました。

 男はわかったと、返事すると、ジャングルの
中に消えていきました。3分ほど経った
ところで、ジャングルから7名ほどの
兵士が、隠蔽してあるカヌーを引き
出して、海上に浮かべると、慣れた
手付きで、ボート目掛けて漕いできました。


紹介書籍:駆逐艦「神風」電探戦記
著者: 「夕雲」及川幸介、「早霜」岡本辰蔵、「神風」雨ノ宮洋之介


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