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巡洋艦大淀 恐ろしいほど静かな夜 [巡洋艦大淀]

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 小淵氏の父親は、農業の合間に茅葺き屋根の 請負仕事をしており、頼まれるとどんな遠方にも 出掛けていき、帰りが遅くなりました。時として 泊まりになることもありました。  義姉が兄に言われて、近所の人に父を 迎えに行ってもらうように頼みましたが、 自転車ででかけたその人は、父のもとにも ついていないだろうと、思えました。  こんな時に父が不在なのは、なんとも心細い 限りでした。兄と姉も途方に暮れて、言葉も ありませんでした。医者を見送った後、 近所の叔父に頼んで、親族に電報を 打ってもらうように頼みに行きました。  病床の母は、顔数カ所を切開されたらしく、 眼鼻口以外包帯でおおわれていました。 苦しそうにしていましたが、熱が出てきた らしく、「寒い、寒い」と言って震えだし ました。そして、炬燵に入れてほしいと 頼まれました。  小淵氏らは、静かに移して足の方を 炬燵に入れてあげました。母の震えは おさまりましたが、呼吸は激しく、普通の 5倍も多い回数で呼吸していました。  その苦しそうな息づかいの中で、母は、 3ヶ月前に生まれた孫のことを心配して いました。おとなしく眠っていると 返事すると、母も眼を閉じました。  小淵氏は、母のそばを離れ、炉端で 父が帰ってくるのを待っていました。 その後、母は、静かに眠ったよう でした。  父はなかなか帰ってこず、いらだちが 出てきました。たまらず、義姉が迎えに行く といって出掛けていきました。焚き火の爆ぜる 音以外は何も聞こえない恐ろしいほど静かな 夜でした。 紹介書籍:“巡洋艦「大淀」16歳の海戦 少年水兵の太平洋戦争” 著者: 小淵 守男


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