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巡洋艦大淀 家なき子らのうつろな目 [巡洋艦大淀]

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 少年二人に見つめられた角田上水は、 見かねて食べ始めたばかりの弁当を 一人に渡しました。  すると、その少年は、どうしようかというように、 仲間の顔色をうかがっていました。小淵氏も 見かねて食べかけの弁当を一人に渡すと、 立ち去ってしまいました。  小淵氏は、「あの子供たちはどうしたの だろう?」と角田上水に聞いてみました。 角田上水は、「空襲で焼け出された 子供たちではないでしょうか。」と答えて きました。  小淵氏は、冷水を浴びせかけられたように、 ハッとなりました。そして、小淵氏は、駆けていき 少年たちを呼び止めると、艦で配給された米と 少量の砂糖を渡してやりました。  角田上水も同じように渡し、「ご飯を炊く ことはできるか。」と聞くと、うなずいてきました。 「誰か炊いている人がいるのか。」と聞くと、 泣き出しそうな顔で、「おばあさんがいる。」と、 答えてきました。  少年が指差した方向を見ると、板切れなどで 囲った小屋がいくつか見えました。小淵氏には、 人間の住むところとは思えない粗末なものだと 感じました。  さらに聞いてみましたが、おばあさんと いうのは肉親ではなく、子供たちも兄弟では ないようでした。同じ境遇の者が、ひっそりと 肩を寄せあって暮らしているようでした。  立ち去っていく子供たちの後ろ姿は、 夢遊病者のようでした。そして、少年たちの 顔には、ついぞ、喜びの表情などは見かけ られませんでした。  角田入水も小淵氏も、強烈な衝撃に 打たれて、無言でした。戦闘の悲惨さには 不感症になっている小淵氏らも、内地の 惨状の一端を見せつけられては、言葉も ありませんでした。 紹介書籍:“巡洋艦「大淀」16歳の海戦 少年水兵の太平洋戦争” 著者: 小淵 守男


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