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巡洋艦大淀 親戚との会話 [巡洋艦大淀]

 小淵氏は、焚き火の煙もにも、懐かしさを 感じていました。鉄瓶の音も、樹液の吹き出す 焚き木の切り口も、みんな以前と変わりない 我が家でした。  ふと、父と、妹の姿が見えないことの気づき 尋ねてみると、父は水上温泉の近くに暮らして いるということでした。妹は、学徒動員で、 太田の中島飛行機製作所に行っている ということでした。  小淵氏は、午前3時頃眠りにつき、 翌日10時に起床しました。眠り 足りないと感じましたが、休暇を 寝過ごすのも惜しかったので、朝食を 済ませると、氏神様に御参りし、 墓参りを済ませました。  近くの親戚にも顔を出し、隣組にも 挨拶して回りました。この頃は、どこの 家でも若い者は兵隊に行くか軍需工場に 就職して、村に残っている若者は、あまり いませんでした。同級生も数人が志願して 軍隊に入りました。  夜になり、親戚の人たちが、話にやって きました。村にも東京の滝の川から学童が 疎開してきて、四万温泉の旅館にいるという ことも知りました。  その中で、「この村が空襲されるような ことはあるまい。」と思い出したように兄が 言いました。  それに対し、「そのうち海軍でも、なにか どえらいことを、やってくれるんじゃない かね。」と、海軍が何かの軌跡でも起こす ことを願望しているようでした。  その後ふと、小淵氏が陽焼けしていることに 気づいた叔父から、「南洋の方にでも行って いたのか。」と聞かれました。  隠すことはできないと悟り、行っていたと 返事しました。すると、知り合いが南洋に 行ったが、どこに連れて行かれたのか 分からなかったという話を聞いたと 話してくれました。 紹介書籍:“巡洋艦「大淀」16歳の海戦 少年水兵の太平洋戦争” 著者: 小淵 守男
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巡洋艦大淀 生家に到着 [巡洋艦大淀]

 村には、残雪がかなりありました。遠くで 夜鳥の鳴く声がしました。それは、何となく 陰気な鳴き声ではありましたが、そんな声にも 切ないほどの懐かしさを感じました。  そして、ようやく生家にたどり着きました。 しかし、表戸を引いてみましたが、開きま せんでした。  裏口に回りましたが、板戸も閉まって いました。声をかけてみましたが、誰も 起き出す気配もなく、仕方なく裏口から 中に入ると、真っ暗闇でした。  土間の隅の馬屋で、穂積号がフフンと 盛んに鼻を鳴らしていました。小淵氏は、 奥の部屋に声をかけました。  すると誰かが起き出してきて、暖炉の 電灯をつけました。つけたのが義姉で、 びっくりしたように、「守ちゃんかい。」と 言いました。  その声がきっかけとなったように、姪の 圭子が泣き出しました。兄も起きてきて、 囲炉裏に火を焚き付けてくれました。 小淵氏は、仏壇に線香をあげ、いつもの ように母や先祖の霊に帰郷を報告しました。  義姉は、ふかしたサツマイモやたくあんを、 出してくれました。4歳になる姪の圭子が 起きてきました。小淵氏は、「大きくなったな。 泣いたりしてはだめじゃないか。」と言うと、 義姉の背に隠れてしまいました。  囲炉裏の焚き火はよく燃えだし、薄暗い 家の中を赤々と照らしました。こうして、 しばらくぶりの炊き火は、煙が目に染みて 涙がポロポロと流れました。  それを目ざとく見つけた姪から、「海軍の あんちゃんだってないてるよ。」と言われました。 小淵氏は、これに思わず吹き出してしまいました。 紹介書籍:“巡洋艦「大淀」16歳の海戦 少年水兵の太平洋戦争” 著者: 小淵 守男
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