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巡洋艦大淀 曳航される [巡洋艦大淀]

 火勢が強まっていく中、小淵氏は、 通信室が火災になったので消火するように 命令されました。  急いで通信室に向かていた時、助けを 求める声がしました。舷窓から上半身を 乗り出して脱出しようとしている者の 声でした。  小淵氏は、近くにいる人と一緒に二人がかりで、 引き出しました。艦内は、延焼防止のため、全部 締め切られており、中甲板以下で逃げ遅れた者は、 舷窓のある個室から脱出するしかありませんでした。  舷窓から3人引き出しましたが、4人目は 太っており、腰がつかえて出ませんでした。 一旦、中に戻ってもらい、裸になって出て きましたが、それでも引き出すのに 苦労しました。  ここで、発令所に残った角田上水のことが 気になり、聞いてみました。すると、一緒に 引っ張っていた一水から、煙突のところに いたという返事が来ました。  そこで、小淵氏は当初の消火場所である 通信室に行くと、角田上水がいました。  敵機との戦いが終わっても、大淀には 火災との戦いが残っていました。それに、 至近弾で艦腹を破られ、そこから浸水 したので、右舷の甲板上から水面までは、 1m程しかありませんでした。  大淀は、2隻の曳航船により、曳航が 開始されました。港内は、風もなく波も ありませんでした。穏やかな春の陽光が 降り注いでいました。  海岸端では、浮き上がった魚をすくって いる人達の姿もありました。その前を 大淀は引っ張られていきました。  ドックに入った大淀は、傾きを直され、 ドック内の海水を排水されました。やがて 陽は沈みましたが、大淀は依然として 燃え続けていました。 紹介書籍:“巡洋艦「大淀」16歳の海戦 少年水兵の太平洋戦争” 著者: 小淵 守男
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巡洋艦大淀 大きく傾く [巡洋艦大淀]

 小淵氏は、発令所に残っていると思われる 角田上水に、退避を促すため、大急ぎで舷門の 電話を取りましたが、艦内電話は不通になって いました。  急いで電路室に行き、伝声管で何度も 呼んでみましたが発令所からは、応答が ありませんでした。  角田上水はうまく脱出できただろうかと 考えましたが、艦内は火災で各所の区画扉や 昇降口のハッチは、すでに閉められてしまって おり、もうどうすることもできませんでした。  小淵氏は、脱出したと考え、機銃分隊の 応援に向かいました。  傾いて動けなくなっている大淀に、敵機は なおも激しく襲いかかってきました。しかし、 爆弾は全部投下してしまったらしく、今は、 機銃掃射だけになっていました。  大淀の機銃分隊員は、直撃弾と敵機の 機銃掃射で、多くの兵員が倒れていました。 その人達に代わって敵機を迎撃するのは、 戦闘分隊員の役割でした。  命令されたことではないものの、各自が それぞれの判断で艦を護るべく猛奮闘して いました。  やがて、激しく襲撃していた敵機も、一斉に 急上昇すると素早く引き揚げていき、上空を 乱舞する爆音もありませんでした。敵機との 戦いは終わりました。  しかし、大淀は、右に大きく傾いて盛んに 黒煙を上げていました。煙突の左下部に 命中した爆弾が缶室で炸裂し、燃料に 引火したようでした。  物凄い黒煙が天に冲し、真っ赤な炎が メラメラと立ち昇っていました。そこには 何本もの消火ホースが引かれ、海水を かけていましたが、火勢は強まるばかり でした。 紹介書籍:“巡洋艦「大淀」16歳の海戦 少年水兵の太平洋戦争” 著者: 小淵 守男
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