SSブログ

巡洋艦矢矧 敵機来襲 [軽巡洋艦矢矧]

 井上氏は、襲来した敵機の数を確かめた上で、
「敵機15機。右25度。高度3度。350向かってくる。」
と報告しました。井上氏の報告が、各見張員を
刺激して、各見張員が次々と報告してきました。

 はじめに先発の敵機30機が、そしらぬそぶりで
艦隊の左上空を、反航で通過していきました。
後続機は、次第に数を増していき、約120機の
堂々たる空中艦隊の威容となりました。

 持てる国の大空中艦隊、相手に不足はないと
言いたいところですが、井上氏は、大いに不服
でした。こちらは、世界最大の戦艦2隻を
伴っての航行であり、120機程度の
航空機では、物足りませんでした。

 上空援護の機体は一機もいませんでしたが、
井上氏は、見くびられてたまるかという
敵愾心を燃え立たせていました。その時、
敵の編隊が変化しました。

 井上氏は、「反航の敵機大群、攻撃開始。」と
間髪入れずに報告しました。百数十機の雷鳴が
一斉に耳を衝きました。同時に、大和と武蔵の
巨砲がうなりました。

 相手は違えど、愛宕ら第四戦隊の弔い合戦
であり、意気はまさに衝天。各艦も遅れては
ならないと砲門を開きました。矢矧も砲門を
開きました。

 しかし、場所がフィリピン島の内海であり、
充分に艦隊を散開させることができません
でした。敵機は、大和と武蔵に攻撃を集中
してきました。数十、数百の爆弾と、魚雷が、
海面に青い水線を曳いて肉薄して
いきました。

 大和と武蔵は、巧みに転舵し、回避して
いました。そして、敵編隊に零式撒弾を
豪勢に浴びせていました。


紹介書籍:重巡「最上」出撃せよ
著者: 「矢矧」井上芳太、「那智」萱嶋浩一、「熊野」左近允尚敏、最上:曾禰章、「五十鈴、摩耶」井上団平
nice!(0)  コメント(0) 

巡洋艦矢矧 ミンドロ島を南下 [軽巡洋艦矢矧]

 2隻の重巡洋艦が撃沈したからと言って、
艦隊の目的は、フィリピン島への突入で
ある以上、時間を割くことはできません
でした。

 第一遊撃部隊は、憤怒のほぞをかみつつ、
一路、予定コースを北上しました。ミンドロ島
西方で、右折し、南西海岸沿いに粛々として、
南下していきました。

 10月23日が暮れ、24日の朝が来ました。
艦隊は、ミンドロ島の東南端を迂回して、
フィリピン諸島の中部を横断する水路を
進航していました。戦艦部隊は、先航
していました。


 午前8時頃、第三戦隊の榛名が、
敵機発見の旗旒信号を掲げました。
井上氏は、信号の方向に12cm
双眼鏡を向けると、ダグラスSBDが
一機、反転して遠ざかっていくところ
でした。

 敵に発見された以上、敵機の来襲は
避けようもありませんでした。敵の
レイテ島タクロバン航空基地から
直距離にして約400km。一時間後には、
対空戦闘が開始されるはずでした。

 この作戦中、上部の見張員は、欠員
していました。井上氏は、最高の見張指揮官
でしたが、督促だけではすみませんでした。
井上氏は、独自の計算で、8時40分から50分に、
敵機が視界に入ると部下に伝えました。

 現在の時刻は8時30分でした。気のはやい
接触機か、敵機の出撃機が早ければ、視界内に
敵機を補足できるはずでした。井上氏は、計算で
右50度から来ると予測し、双眼鏡をのぞきました。

 はたせるかな、15機の敵機が、はるかな雲の
切れ目から出現し、堂々と編隊を組んで、接近
してきました。


紹介書籍:重巡「最上」出撃せよ
著者: 「矢矧」井上芳太、「那智」萱嶋浩一、「熊野」左近允尚敏、最上:曾禰章、「五十鈴、摩耶」井上団平
nice!(0)  コメント(0) 

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。