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巡洋艦矢矧 勇敢な特攻機の体当たり [軽巡洋艦矢矧]

 呉の空襲に、どこからか友軍が駆けつけて
きました。上空で空中戦が開始されました。
対空砲火もあり、敵の編隊は、ガラリと
崩れていました。

 乱戦のさなか、一機のSB2C艦上爆撃機が、
飛び出していきました。そして、抜け駆けの功を
争うように、千歳に向かっていきました。千歳の
機銃が、SB2Cに集中し、どっと火箭を集中
しました。

 600mまでせまってきた時、敵機の尾部から、
火焔が流れました。これを見ていた井上氏は、
良かったと思いましたが、敵機は、火を
曳きながらも、千歳から機首をそらそうと
しませんでした。

 矢矧の見張指揮所に、「あっ」という低い
うめき声が漏れ、火達磨になった敵機が、
千歳の飛行甲板に、激突しました。

 甲板は、一瞬、大きく波打ち、褐色の煙と
火焔が、千歳の中央部を包み込みました。
エンジンが、空高く舞い上がりました。

 井上氏は、敵の勇敢な特攻機の体当たりを
目の当たりに見せつけられた思いがしました。
爆煙の薄れた後の千歳の甲板は、うねりの
ようなゆがみが生じており、使用不能は
明らかでした。

 伊勢と日向は、直撃弾を食らいました。
大淀は、艦内に誘爆を生じて、在泊の
僚艦に被害を及ぼす恐れがあると
判断され、港外に出ていきました。

 被害のほどはわかりませんでしたが、
天城と葛城も、泊地を変更しました。
港内にいたのでは、対空砲火の指向も
思うようにできないという理由でした。

 敵機の撃墜は、20機ほどが、叩き
落とされて港内の水面に突入し、その他で、
撃墜されたものを合わせると、約30機ほどと、
推定されました。


紹介書籍:重巡「最上」出撃せよ
著者: 「矢矧」井上芳太、「那智」萱嶋浩一、「熊野」左近允尚敏、最上:曾禰章、「五十鈴、摩耶」井上団平
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巡洋艦矢矧 呉空襲 [軽巡洋艦矢矧]

 1945年3月19日午前7時過ぎ、
艦載機らしいもの約20機という
報告がきました。

 井上氏は、内地に攻撃してくるのに、
20機ぐらいで、奥地に来るはずがないと
判断し、「まだいるはずだ。」と、双眼鏡を
覗きました。

 すると、20機どころか、散開もせずに
飛行中の編隊を見つけました。総計130機は
確認できました。井上氏はうなりました。

 敵地での対空戦闘ならば、そう感じません
でしたが、祖国での空襲は、物悲しさを
感じていました。

 敵の編隊は、呉軍港めがけて、突進して
きました。軍港を囲む砲台から、黒い煙と、
火線が怒りだしたように火を吐き
はじめました。呉郡港内には、
大小百隻近い艦艇が入港
していました。

 在泊艦は、一斉に砲門を開きました。
轟音たる発射音が耳を圧し続けました。
敵機は空母に狙いを定めていました。

 港内奥深くに潜む千歳に、どっと殺到
していきました。そして、千歳の近くにいた
伊勢と日向にも、急降下していきました。

 工廠内に繋がれていた戦艦榛名から、
轟音たる音響とともに、黒煙が噴き上がり
ました。爆弾が命中したようでした。三艦の
まわりには、カモフラージュが、ことさら
不気味でした。

 矢矧の先にいた新営空母天城と葛城は、
24発ロケット弾をほとばしりました。
それが命中したのか、敵の3期から黒煙が
噴き出され、そのままの勢いで、海面に
激突して大きな水しぶきを上げました。

 矢矧の横にある岸壁では、初めて実戦を
見る呉工廠の工員たちが、敵機が落ちるのを、
「やった」と歓声を上げてみていました。


紹介書籍:重巡「最上」出撃せよ
著者: 「矢矧」井上芳太、「那智」萱嶋浩一、「熊野」左近允尚敏、最上:曾禰章、「五十鈴、摩耶」井上団平
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