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巡洋艦矢矧 敵陸軍機襲来 [軽巡洋艦矢矧]

 航行を続けているときに、上部見張員から、
巨大な航空機の編隊を発見したという報告が
ありました。井上氏は確認し、B29だろうと
判断し、艦橋へ報告し、監視を続けました。

 凝視すると、方向舵が2枚あることが見えて
きました。B29は一枚なので、B29では
ないことが分かりました。

 そうなると、B29と大差ない雄姿を持つ
B24であると判断できました。すぐさま
確認報告をしました。

 機数は29機の大編隊であり、高度4000mを
マニラ空襲して悠々引き揚げてくるところのよう
でした。大編隊は、40km地点から取舵をとり、
大和を襲ってきました。

 B24は、陸上爆撃機で、陸上攻撃用の爆弾しか
持っていませんでした。炒り胡麻のような爆弾では、
大和はびくともしませんでした。大編隊は、矢矧の
上空も通過してきました。

 矢矧は、三番砲塔の零式撤弾と、左舷高角砲が
火を噴き、敵の中央で炸裂しました。皆の眼が
上空に注がれる中、4機のB24が、子供に叩き
散らされる玩具の飛行機のように粉々になって
飛び散りました。

 空中分解から、再分解の音が聞こえ、ニュース
映画でも見ているように、海面に突入しました。
派手は水煙を上げて海中に突っ込む機体、翼が
分解消失して、胴体だけが水中に突っ込む
機体などがありました。

 上空には、一機の機体から吹き飛ばされた、
白い落下傘が飛び出していました。見事な技術
でしたが、頭は下がっており、すでに事切れて
いるようでした。

 井上氏は、目前に見える死体に、敵味方は
ないと思い、頭を下げました。


紹介書籍:重巡「最上」出撃せよ
著者: 「矢矧」井上芳太、「那智」萱嶋浩一、「熊野」左近允尚敏、最上:曾禰章、「五十鈴、摩耶」井上団平
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巡洋艦矢矧 無航跡の魚雷 [軽巡洋艦矢矧]

 10月26日の朝となりました。左手に
見えるサマール島は、すでに後方に去って
いきましたが、未明は、敵潜水艦や、
哨戒艇のかき入れ時でもありました。

 井上氏は、過去に、敵潜水艦が発射した
魚雷が、暁の海面に青い水線を描いて走って
いくのを、双眼鏡で補足したことがありました。

 広い仮面に、水面にのぞかせた河童の頭の
ように見え、ちょっとユーモラスでした。
しかし、実態は、剣呑極まりないもの
でした。

 敵の偵察機が飛来してきました。その
報告を受けて、雷撃機が飛来してきました。
敵の雷撃機は、大和に攻撃を集中して
いました。

 その数は、18本ほどに見えましたが、
大和は全てかわし、微動だにしません
でした。

 しかし、大和の後続を航行していた、
矢矧の姉妹艦能代が、大和のかわした
魚雷のお流れを数本頂戴するはめに
なりました。能代の左舷各部に円柱状の
水煙と猛火が、噴煙しました。

 鉄で作った軍艦が、こうも燃えるのかと
思うほど、火の手は早く、物凄いもの
でした。浸水は、上甲板まで、洗って
いました。

 矢矧が、能代の側を通りかかると、
駆逐艦が救助活動をしていました。
井上氏は、見張りの強化をすべく
海面を眺めました。

 敵も、この頃は、酸素魚雷のように、
無航跡の魚雷を使うようになり、
発見が難しくなっていました。

 ちょうど見張っていた時、左の方から、
駆逐艦の方に、重油の泡粒が点々と
連なって浮き条となって走っていくのを
見つけました。ぼんやりしていると、
判断しにくい航跡でした。

 井上氏は、直ぐさま参考報告しました。
油断がならない海域でした。


紹介書籍:重巡「最上」出撃せよ
著者: 「矢矧」井上芳太、「那智」萱嶋浩一、「熊野」左近允尚敏、最上:曾禰章、「五十鈴、摩耶」井上団平
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