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巡洋艦矢矧 不吉な謎のジンクス [軽巡洋艦矢矧]

 井上氏は、髭をそった後、戦争は、
死ぬことより、勝ち抜くことが大切。
その戦闘力の有無は、各人の、精神が
左右する。死ぬことはいつでもできる。

 勝ち抜くのは、非常に難しい。井上氏は、
その目的の両方とも、身だしなみで、
整えたとしています。

 問題は、信号長の言葉を聞く前に、
坊主頭になった人達でした。彼らは
「嫌なことを言う」という顔つきを
していました。

 そして、この夜に整髪した人達は、
ことごとく戦死していました。その中に、
掌航海長も入っていました。不思議な
ものだと思ったとしています。

 戦場では、このような不吉な謎の
ジンクスが存在すると言えます。軍艦も
出撃直前に、お色直しした艦は、撃沈する
確率が高いように感じられます。武蔵は
その例です。


 新たに着任した矢矧艦長原為一大佐は、
新免二刀流の開祖宮本武蔵研究の第一人者
でした。しかも、神技行為を、実戦に即応
せしめた豪傑でした。

 その武勇伝として、原艦長が、水雷戦隊
司令としてソロモン方面にいた時、濃霧の中で
発見した敵艦隊に対し、発見・即魚雷発射を
命じました。宮本武蔵の一定位置に接近した
相手の体を横一線する、間髪刀法でした。

 結果3隻の駆逐艦を撃沈したという
ことでした。狙っての魚雷発射でも、
このような戦果は容易に出るものでは
ありませんでした。宮本武蔵を研究して
得た収穫だと話していました。

 井上氏は、この話に一つ疑問が出て
きたので、自分なりに咀嚼してみました。


紹介書籍:重巡「最上」出撃せよ
著者: 「矢矧」井上芳太、「那智」萱嶋浩一、「熊野」左近允尚敏、最上:曾禰章、「五十鈴、摩耶」井上団平
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巡洋艦矢矧 身辺整理 [軽巡洋艦矢矧]

 出撃時刻が、4月6日午後6時と
告げられました。

 出撃を明日に控えて、航海士の松田中尉は、
海図へ航路を記入し、図書を整理し、忙しく
動き回っていました。艦内居住区では、
身の回りの整理が続いていました。

 そこに、掌航海長がはいてきて、「武人の
たしなみだ。頭髪、ひげぐらいはきれいにして
おけよ。」と言って、室内を見回しました。

 井上氏は、まるで、靖国に直行だと
言われているような気がしました。
当然必要な覚悟とはいえ、敵をやっつける
ことだけしか考えていなかった井上氏は、
内心驚いていました。

 改めて顎を触るとざらついていました。髭を
剃っていようがいまいが、靖国は受けつけない
ことはないだろうと思いながら、ひげ剃りに
かかりまいた。

 すると、今度は、ジャングルひげの信号長が
入ってきました。そして、「みな、いい男になり
おるのう。そんなに戦死したいのか。

 戦死したら戦争はできないぞ。おれの体験では、
出撃前にきれいになったやつは、皆戦死したぞ。
おれは沖縄に戦争に行く。だからこのひげづらで
たくさんだ。

 第一睨みがきく。見張員長(井上氏)も、死にたい
ですかな。あんた。死ぬ準備より、よく見張って
くださいよ。」と大笑いしていました。

 しゅんとなっていた室内が、一度に明るく
なりました。井上氏も、信号長の意見に同感
でした。しかし、半分剃ってしまっている以上、
やめるわけにもいかず、ひげだけを処理し、
頭髪はそのままとしました。

 航海長と信号長の申し出を、半分づつ
行ったような恰好が、自分でおかしかったと
しています。


紹介書籍:重巡「最上」出撃せよ
著者: 「矢矧」井上芳太、「那智」萱嶋浩一、「熊野」左近允尚敏、最上:曾禰章、「五十鈴、摩耶」井上団平
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