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巡洋艦熊野 敵潜水艦の魚雷命中 [巡洋艦熊野]

 衝撃を受けた熊野の状況を確認した
左近允氏は、人見艦長に衝撃の原因は、
右舷中部に魚雷が命中したためだと
報告しました。

 その直後、前にも増した激動が大音響と
ともに襲ってきました。艦首に魚雷が命中
したようで、巨大な海水の筒が、吹き飛んだ
船体の一部とともに、眼前に湧き上がり
ました。時刻は午前10時48分でした。

 熊野は、右に11度傾き、前部の
水柱が、鉄片の雨を甲板をふらせてから、
消滅しました。

 熊野は完全に停止し、艦首と呼べるものは、
もはや跡形もなくなっていました。機関科からの
報告は、はっきりしませんでした。直ちに、魚雷の
投棄と、左舷注水が令されました。黒い重油が、
海面に漂い始めました。

 しばらくして、まとまった機関科からの
報告が上ってきました。それによると、
右舷前部の機関室に魚雷が命中して、
隣接区画の隔壁も破れ、左右前後の
機械室が、四室すべて満水という、
万事休すという状態でした。

 アメリカ側の記録を見ると、船団を
発見した潜水艦群は、一番大きな艦(熊野)を
目標に選び、9本の魚雷攻撃を仕掛けた。
その後も熊野を標的に何回か攻撃を
仕掛けたとなっています。

 熊野に命中させたのは、潜水艦レイの4本
発射した内の2本のようでした。

 アメリカ軍の記録と付き合わせると、
最初の攻撃を、熊野は全く気づいて
いないこと、次の攻撃は、アメリカ軍は
4本の魚雷に対し、左近允氏は、6回の
爆発を聞いていること。

 潜水艦が撃沈したという記録が
ないことなどに、食い違いは
ありますが、ほぼ状況と時刻は
一致しています。



紹介書籍:重巡「最上」出撃せよ
著者: 「矢矧」井上芳太、「那智」萱嶋浩一、「熊野」左近允尚敏、最上:曾禰章、「五十鈴、摩耶」井上団平
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巡洋艦熊野 爆雷攻撃 [巡洋艦熊野]

 午前10時40分頃(前回の敵潜水艦
攻撃から約50分後)、青葉が、潜水艦
探知の信号を掲げました。

 続いて、見張員から、「潜望鏡発見」の
報告を受けました。状況は前回と同じで、
熊野は回頭しました。

 左近允氏は、見張員に潜望鏡の様子を
確認すると、「まだ出しています」
という返事でした。

 左近允氏は、潜望鏡を長時間出して
いることを不思議に思い、間違いないか
確認しました。

 見張り委員から間違いないという返事が
きた直後、「潜望鏡潜没。魚雷発射。」という
報告がきました。

 今回は、前回と違い、回頭済みのところに
魚雷がきたので、だいぶ近いと感じました。
しかし、危険な思いはしなくて済みそうでした。
魚雷は、熊野の右舷を通り抜けていきました。

 熊野は、そのまま敵潜水艦に、突っ込んで
いきました。巡洋艦以上の大型艦が潜水艦の
攻撃を受けた時は、遠ざかるのが常道ですが、
今回は近すぎるので、攻撃するしかありません
でした。

 熊野は、敵潜水艦の直上と思われるところに、
爆雷攻撃を加えました。艦尾から連続して投下
された8個の爆雷は、水中で爆発し、後方の
海面を次々に盛り上がらせました。至近弾の
ような衝撃が、熊野を襲いました。

 2度ほど大きな衝撃があり、水柱が
黒ずんで見えました。水雷長が、
「撃沈だ。」と大きな声で
言いました。

 その頃、ようやく敵潜水艦が、発射した
魚雷6本が、陸に命中して爆発しました。

 ようやく1隻仕留めたかと思った瞬間、
爆雷の衝撃とは異なる震動が、熊野を
襲いました。人見艦長は、右前方にいた
左近允氏と目が合いました。

 人見艦長は、「今の衝撃は何か?」と
眼で尋ねていました。


紹介書籍:重巡「最上」出撃せよ
著者: 「矢矧」井上芳太、「那智」萱嶋浩一、「熊野」左近允尚敏、最上:曾禰章、「五十鈴、摩耶」井上団平
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