源田実参謀 欠陥頭脳の戦争指導

　研究会から２年後の１９３６年、横空の
戦闘機分隊長に就任した柴田大尉は、
「脆弱な空母を防御するには、多数の
戦闘機が必要だし、その他の防御法も、
研究の必要がある。」という意見を
述べいます。

　これに対し、戦術教官の三和少佐は、
「君はそれでも日本人か。」と罵倒
しました。

　三和少佐は、戦闘機が、攻撃機を阻止
できないのは演習で実証されているので、
戦闘機の代わりに爆撃機や雷撃機を
多く積み、攻撃力を上げるべきだと
力説していました。

　実証というのは、以前紹介しました通り、
旧式戦闘機で、新しい攻撃機に向かっていく
というイカサマ演習であり、全く根拠に
ならないものでした。戦闘機の有用性を、
論理的に検討されていない状態が
続いていました。

　さらに、横空の副長大西参謀長も同様の
考えであり、柴田大尉は、大西参謀長もかと
驚きました。このままでは、戦闘機が弱小化
されると聞きを抱いた柴田大尉が、論文を
書いて、正式に出版しました。

　大西参謀長は、自分の意見に楯突く論文を
書き、さらに、大西参謀長を見限り、大西
参謀長主催の研究会で一切発言しなく
なった柴田大尉に対し、殴りつける
ということをしています。

（追記）
　ここまで見てくると、源田参謀より、
柴田大尉の方が、航空参謀にふさわしい
と感じます。

　柴田大尉の構想通り、戦闘機を強化し、
防御方法を検討していれば、機動部隊
決戦においても、アメリカ軍と互角に
戦えたと言えます。

　人命軽視も甚だしい戦闘機無用論を
展開していた人物は、山本長官同様、
柴田大尉が言う通り、欠陥頭脳の持ち主
であり、指導者にしてはならない人物で
あったと言えます。


紹介書籍：航空作戦参謀　源田実
著者：生出　寿

源田実参謀 大馬鹿野郎

　研究会の席で、日高大尉に続いて、
源田参謀と合わない柴田大尉も
発言しています。

　「敵機にぶつかるほど接近して射撃すれば、
命中率は確かにいい。しかし、戦闘機の固定
機銃が攻撃機などの旋回機銃と比べて有利
なのは、連続射撃による命中効率（単位
時間における命中弾数）が高いことである。

　これを考えずに、至近距離で旋回銃と
撃ち合えば、命中効率がほぼ同じになり、
戦闘機固有の威力を減殺することになる。
従って、戦闘機は、被害を最小にできる
距離から、射撃することである。

　そうなれば、命中効力（命中効率＋弾丸の威力）が
下がるので、優秀な照準器や高性能の兵器弾薬を
発明し、実践的な訓練をする必要がある。」という
ものでした。論理的であり、検討の価値がある論と
言えます。

　しかし、この研究会に参加していた山本長官
（当時少将）が、柴田大尉が話し終わるか
終わらないうちに、次のことを述べています。

　「若い士官が、射撃距離を延ばすという
意見が出ているが、海軍が今日あるのは、
肉薄必中の伝統精神にある。

　今後、１ｍたりとも射撃距離を伸ばそうと
することは、絶対に許さん。」と頭ごなしに
叱りつけた。

　柴田大尉は、この山本長官の態度に、
「精神偏重に目がくらみ、歴史的事実や
自然必然性を忘れ、権力を傘にきて
威張ってものを言う大馬鹿野郎だ。」と
思ったようでした。

　そして、何日か経って、柴田大尉は、
自分の「ひらめきの記録」に、「上の方に、
わけのわからんのがいると、必ず負ける。」
と記録しています。

　この研究会に参加していた、爆撃分隊長の
天谷大尉は、山本長官の発言に、「今日から
訓練はヤメた。ぶつかるまで接近すれば、
１００％命中する。」と、山本長官にも
聞こえるほどの大声で、発言しています。


紹介書籍：航空作戦参謀　源田実
著者：生出　寿