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源田実参謀 台湾沖航空戦の大本営発表 [源田実航空作戦参謀]

 大井大佐は、軍令部情報課のアメリカ
大陸担当の第五課へ行きました。大井
大佐と同期の実松中佐と、課長の
竹内大佐がいました。

 大井大佐は、実松中佐に尋ねると、
「絶対ダメ。大負け、大失敗だ。」と
返事してきました。

 この電話がかかってきて、竹内大佐が
でると、「軍令部で祝杯を上げるから
来いと言っている。俺はボイコットする。」
と言ってきました。

 実松中佐も、「俺もいかん。断る。
客観的にみれば、勝てるわけが
ないんだ。」と異口同音でした。

 この後、大井大佐は、日吉の連合艦隊へ
行きました。アメリカ空母の模型が
置いてある部屋に入ると、中島中佐と
渋谷中佐がいました。

 渋谷中佐と大井大佐は、互いによく
知っている仲であり、大井大佐が来ると、
渋谷中佐は、「また、輪をかけたのが
きたわい。」と言ってきました。

 中島中佐は、「空母の甲板は、こんなに
厚いんですよ。こんなものに、あんな爆弾
落として沈みますか。」とやっていたと、
言っていました。

 大井大佐が、軍令部や連合艦隊に
行ったのは、話の内容からすると、
10月15日だと思われます。

 この日の午後3時、大本営は、次の
ような驚くべき発表を行いました。

 「台湾東方海面の敵機動部隊は、
昨14日来東方に向け敗走中にして、
我が部隊は、この敵に対し、反復
猛攻を加え、戦果拡充中なり。

 現時点の戦果は、轟沈―航空母艦7隻、
駆逐艦1隻、撃破―航空母艦2隻、
戦艦1隻、巡洋艦1隻、艦型不詳
11隻」という内容でした。

 竹内大佐や、実松中佐のような、冷静な
頭脳を持っている人たちが、祝杯を
ボイコットしたのは、当然と
言えます。

 
紹介書籍:航空作戦参謀 源田実
著者:生出 寿
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源田実参謀 大井大佐 [源田実航空作戦参謀]

 901空の電探部隊が、台湾沖航空戦の前に
連合艦隊の指揮を受けることになったので、
大井大佐は、すべての作戦の情報を
回すように要求しました。

 大井大佐は、東京通信隊のすぐそばにある、
日比谷の一角に衆議院議長官舎に寝泊まり
していました。戦が始まったので、枕元に
電話を置いて、持ってきた電報を寝ずに
チェックしていました。

 「命中確実」、「轟沈確実と認む」という
電報が来ました。理由を見ると、「後ろを
見ると大きな赤い火柱が出たから」と
なっており、こんなことでは撃沈とは
認められないと思い、全部にいちいち
疑問符をつけたとしています。

 やがて、自分の指揮下にあった電探機が
一機も帰ってこないことが分かりました。
大井大佐は、暗然として、くやしくて
仕方ないと感じていました。

 翌朝、軍令部第一課長の山本大佐の
ところに行き、「なんですか。あなた方、
電探を全部潰したじゃないですか。一番の
電探名手である、貴方も知っている
丸山君も死んだんですよ。」と抗議に
行きました。

 山本大佐は、電報を見せて、「いや、
こんなにやっているじゃないか」と、
言いましたが、大井大佐は、「これで
やっていると言えますか」と
議論したとしています。

 軍令部は、「現地でやったということを、
軍令部が嘘だと言えますか。」という意見
ですが、大井大佐は、「現地が言うことと、
貴方の頭で考えたのと両方を合わせて
考えたらどうですか。

 現地の言う通りなら、上級司令部は
いらんじゃないですか。」と反論して
います。

 大井大佐の言っていることは、軍隊に
限らず、目が届かない大きな組織全てに
言えることです。


紹介書籍:航空作戦参謀 源田実
著者:生出 寿
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