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駆逐艦夕雲 待望の夜明け [駆逐艦夕雲]

 気合で脱落者を出さないようにと繰り
返していましたが、人員点呼をして、
人数の確認をしようということに
なりました。

 端から、1番、2番と順次呼称が
続いて、24番で途切れました。
念の為、再度行うと、24番で
終わりました。

 筏の上には6人いるので、筏の周囲には
18人がいることになります。24人で、
隣同士を監視しながら、「全員夜明けまで
頑張り抜こんだ。一人も脱落する者が
ないようにしよう。」という団結を
固めました。

 改めて、仲間の話を聞くと、軍医長を
始め、ほとんどの戦友が負傷しているようで、
及川氏は、かすり傷一つなく、手足は満足に
動き、体中どこにも異常がないという状態で
あることを、改めて噛み締めていました。

 しばらくして、待望の夜明けが来ました。
夕雲が撃沈した午後9時から、8時間ほどが
経っていますが、この時は、ずいぶんと
長い夜だったと感じました。

 明るくなれば、僚艦の助けを得られる
かも知れないし、望めなくても、他に生きて
帰れる道も発見されないとは限らないと、
前向きな考えになってきました。

 暗闇の漂流は、言い知れぬ束縛感があり、
考え方も閉塞的になるようでした。朝になれば、
夕雲から生還した24名の乗員が生きて
帰れるか、ソロモンの藻屑と消えねば
ならない運命となるかの、判決の日に
なると感じられました。

 及川氏が、早く朝になれと東の空を眺めて
いると、刻一刻と明るさを増し、まばらに
残っていた星も、ほとんど消えていき、
かすかに水平線も分かるようになって
きました。


紹介書籍:駆逐艦「神風」電探戦記
著者: 「夕雲」及川幸介、「早霜」岡本辰蔵、「神風」雨ノ宮洋之介
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駆逐艦夕雲 睡魔との戦い [駆逐艦夕雲]

 けが人の休息の場を設けるために、
及川氏は、各自が持っている木片を
組み上げて筏を作ることを
提案しました。

 木片で漂っていたら、また散り散りになる
と考えた乗員たちは、皆この及川氏の案に
賛成し、早速筏づくりに取り掛かりました。
無傷の者は、率先して手探りで、周囲の
木片をかき集めていました。

 中には、ロープの切れ端を拾ってくる者が
あり、たちまち協同の力が実って、筏が
出来上がりました。早速負傷者を乗せて
みましたが、ズブズブと沈み始めました。
積載過剰のようでした。

 しかたなく、重症者のみと規定を改め、
その他のものは、周囲につかまって、
立ち泳ぎとなりました。

 重傷者6人のみを筏に乗せると、筏は
安泰でした。これで重傷者の脱落は
防止できそうでした。

 しかし、筏の周囲にいる人達の脱落
防止方法は、いい案が浮かびません
でした。隣同士で監視し合いながら、
眠らせないことくらいしか、ありません
でした。

 お互い隣同士で注意し合いながら、
夜明けまで頑張ろうということに
なりました。

 夜が更けるに従って、押し寄せてくる
疲労や、空腹、眠気が、払い除けても
またすぐにやってきました。

 始めのうちは、軍歌を歌ったり、冗談を
言って、仲間を笑わせたり、オハコをうなり
だしたりする者がいました。

 これなら翌朝までの漂流もさほど心配する
必要はないと、思われましたが、これも長くは
続かず、押し寄せる疲労に打ちつぶされて、
いつの間にか、闇に溶け込む沈黙に
変わりました。


紹介書籍:駆逐艦「神風」電探戦記
著者: 「夕雲」及川幸介、「早霜」岡本辰蔵、「神風」雨ノ宮洋之介
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