SSブログ

駆逐艦早潮 ネズミ輸送 [駆逐艦早潮]

 薄暮が、海面にせまってきました。

 この日は、朝から敵の大型機の接触を
受けており、いつもであれば、空襲を
受けているはずですが、一向に敵の
攻撃隊は出現せず、日没を無事に
むかえる事ができました。

 日没を境に、早潮は、全速の35ノットを
発揮して突っ走り始めました。およそ、
敵機の行動範囲は150海里であり、
日没になってから、この圏内に突入を
開始し、その後全速で突っ走っても、
目的地まで4時間かかりました。

 到着と同時に荷揚げを行い、再び全速で
この150海里圏内を出るまでには、往復
10時間はどうしてもかかることに
なりました。

 もし、まごまごしていて、日の出が
すぎても、敵の行動圏内にうろついて
いようものなら、たちまち敵の餌食に
なります。

 これが、駆逐艦のみで行うネズミ上陸、
大発を使用するアリ上陸の由来でした。
ネズミのごとく、夜間のみ活動し、
大発は、アリのごとくノロノロ
動くから、この名前がつきました。

 アメリカ軍は、この輸送を、
「東京エキスプレス」と名付けて
いましたが、ネズミ上陸のほうが、
当たっていると、岡本氏は
考えていました。

 早潮は、ほぼ予定時刻の午後9時50分頃に
至って、タサファロング沖へと進入を開始
しました。

 「両舷機、停止」の号令後、艦の行き足を
とめるべく、若干の後進がかけられると、
艦尾に白い渦がまいて、やがて、艦は
完全に停止しました。

 直後、手ぐすね引いて待機していた
艇員たちが、急ぎそれぞれの受け持ち艇に
乗り込み、ついで、6そうの艇が、早潮の
両舷につけられるや、ただちに揚陸部隊の
乗艇が開始されました。


紹介書籍:駆逐艦「神風」電探戦記
著者: 「夕雲」及川幸介、「早潮」岡本辰蔵、「神風」雨ノ宮洋之介
nice!(0)  コメント(0) 

駆逐艦早潮 任務の重大さ [駆逐艦早潮]

 先任将校から告げられた注意事項は、
①海岸から10m沖合に、珊瑚礁が
 周囲を取り巻いており、ここに
 乗り上げないようにすること。

 そのためには、山の稜線に凹地が
 見えるので、それを目標に艇を
 進めれば、切れ目があるので、
 そこを抜けよ。

②早潮は、午後11時頃に、出港
 予定である。予定時刻までに
 帰還できなければ、やむをえず
 出港するので、その覚悟でやって
 もらいたい。
というものでした。

  岡本氏は、気軽に了承の返事
 しましたが、艦橋を下りた後、
 任務の重大性に、いまさらの
 ように責任の重さを感じました。

  岡本氏は、この当時、ガダル
 カナル島の戦闘が、遅々として
 進んでいないことは、詳細は
 聞いていなかったものの、
 うすうすながら、耳に
 入っていました。

  そして、最も必要なものは、
 一粒の米、一発の銃弾であることを
 感じていました。

  岡本氏は、どんな事があっても、
 これだけは送り込まなければならない
 と覚悟を決めました。

  あらゆる艱難辛苦を重ね、貴重な
 犠牲を払って、はるばる日本内地から、
 ここまで運んできて、最後の一歩で
 失敗したとあっては、申し訳ないと
 感じました。

  岡本氏は、早速、一&二分隊の先任
 士官を呼ぶと、艇員たちの選出に
 取り掛かりました。


  この点では、艇長以下、みな短艇の
 操縦によくなれた猛者ばかりで、
 編成することができました。

  岡本氏は、作戦内容と注意事項を与え、
 万一を覚悟して、身の回りの整理を
 行いました。

  防暑服を第三種軍装に着替え、軍刀、
 双眼鏡、拳銃などのいっさいの準備を
 整え終わって、いよいよ、時が来るのを
 待つのみとなりました。


紹介書籍:駆逐艦「神風」電探戦記
著者: 「夕雲」及川幸介、「早潮」岡本辰蔵、「神風」雨ノ宮洋之介
nice!(0)  コメント(0) 

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。