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駆逐艦夕雲 直前の危機 [駆逐艦夕雲]

 及川氏は、なるべく岸の近く湾口に
入ろうと岸に近づいていきました。

 すると前方に、岸から5~600mほどの
間隔で、海面に異様なものが浮かんで
いました。直ちに減速し、50mまで
近づいてみました。

 なんと前方にあったのは、機雷でした。
これが、2~30m間隔で、点々と海岸まで
取り巻いていました。及川氏は、浮遊機雷が
あることを叫び、面舵を命じました。

 さらに、総員に、前方を見張って、機雷が
ないか確認するように命じました。仲間たちは
驚いて、海面を見張りました。一瞬緩みかけて
いた緊張が、再び締まりました。

 及川氏も、ここまできて機雷に触れて木っ端
微塵ではたまらないので、進路を見張るように
命じました。

 ボートはゆっくり右に弧を描きながら、海岸に
沿って、東進しました。白い砂浜は、高くヤシが
茂り、大きな木陰を作っており、見るからに
涼しそうで、誘われているように感じました。

 ボートは、進路を慎重に進路を見守りながら、
海岸に沿って、進んでいました。すると、1km
くらい前方に、浅い入江が見えました。

 及川氏は、その入江で、小休止することを
考えながら、海岸を見ながら進んでいきました。
ところが、海岸に茂っている大木の頂き近くに、
人間の作ったと思われる小屋を発見しました。

 ソロモン諸島の原住民は、木の上に家を
作ることはありませんでした。ボートを停止させ、
小屋の周辺を注意深く観察すると、木の根元
から砲口が突き出ていました。

 木の上の家は、見張り台のようでした。


紹介書籍:駆逐艦「神風」電探戦記
著者: 「夕雲」及川幸介、「早霜」岡本辰蔵、「神風」雨ノ宮洋之介
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駆逐艦夕雲 ブーゲンビル島に到着 [駆逐艦夕雲]

 仲間たちはわからないようでしたので、
及川氏は、決して見失わないように、
稜線を見据えていました。

 そこに目をやられていた北条大尉から、
「山の形は、どのように見えるか」と、
尋ねてきました。

 及川氏は、「不等辺三角のような形で、
ブインに入港する時に見慣れていますから、
ブーゲンビル島に間違いありません。」と
答えると、大尉は安心した表情で喜びました。

 ボートは、昨夜出発してから、好調を
維持しており、入港は確実でした。前方に
見える稜線は、その後も消えることなく、
次第にはっきりとその姿を浮かべ、
消えることはありませんでした。

 眼の前に見えているのが、ブーゲンビル島
だと確信しました。さらに近づくと、濃緑に
覆われた南国の島に変わっていき、すその方に、
白絹を敷いたように浜が続き、ところどころ
ひときわ高く、ヤシの茂っているのも見えて
きました。なつかしい、まぶたに描いた
ブーゲンビル島でした。

 あきらめずに、精一杯頑張り通してきた
苦労が、やっと報いられたと感じました。
押し寄せる死にたいして、元気を出せと、
不屈の敢闘を強要し、ついに打ち
勝ちました。

 海岸まで目測で2kmほどまで近づき
ました。鬱蒼と茂る島の稜線は、照りつける
炎天のもとに、静かに眠っているように
見えました。ブーゲンビル島の東海岸に
たどり着きました。

 及川氏は、司令部の桟橋に索をとるまでは、
気を緩めてはならないと、自分を引き締め
ました。そして、この判断が正しかったことを、
この直後証明するような出来事がありました。


紹介書籍:駆逐艦「神風」電探戦記
著者: 「夕雲」及川幸介、「早霜」岡本辰蔵、「神風」雨ノ宮洋之介
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