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駆逐艦夕雲 ボートの状況 [駆逐艦夕雲]

 エンジンを動かすと行っても、真っ暗な中、
しかも不慣れな敵のエンジンを動かすのは
困難でした。しかし、起動させなければ
生還できないので、やってみることに
しました。

 敵のものでも、エンジンの理論は変わらない
だろうと考え、まず、闇の中、手探りで機構の
調査をはじめました。機械部員の鈴木兵曹らが、
模索をはじめました。

 シリンダーに通じるパイプを指で追い、
燃料タンクの位置を確認しました。そして
燃料を確認すると、満タンでした。オイル
タンクも同様に確認し、満タンであることを
確認しました。

 次に、バッテリーの位置を探しました。
これは手間取りましたが発見し、端子を
つなげてみると、スパークが発生し、
電気も大丈夫だと確認できました。

 起動する準備が整っていることを確認
できたので、起動させることにしました。
まず、クラッチが切れていることを確認し、
燃料タンクとオイルタンクのコックを開き、
電気スイッチを入れました。

 後はクランクを回せば起動するはず
でした。空腹と疲労で残り少ない力を
振り絞り、クランクを回しました。

 3回ほど力いっぱい回すと、すんなり
エンジンがかかりました。及川氏は、
エンジンがかかった時に、これまでの
疲労がいっぺんに吹っ飛んだような
気がしました。

 レバーで、回転の増減を確認し、好調で
あることを確認しました。疲れた体を打ち
伏していた仲間たちも、エンジンの音を
聞いて、目をうるませながら喜びました。

 及川氏は、心の中で、「万歳」をとなえ、
これで発進できると喜びました。


紹介書籍:駆逐艦「神風」電探戦記
著者: 「夕雲」及川幸介、「早霜」岡本辰蔵、「神風」雨ノ宮洋之介
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駆逐艦夕雲 ボートを入手 [駆逐艦夕雲]

 雷鳴が轟くなか、20分ほど筏を漕いだころ、
だいぶボートに近づきました。及川氏は、
念のため、ボートの方向に、「おうい」と
大声を張り上げ、呼びかけてみました。

 すると、ボートの方から返事がありました。
及川氏は、返事は鈴木兵曹のものだと確信し、
ボートの櫂があるか尋ねました。

 鈴木兵曹からは、「櫂もありますが、機械も
付いています。」という返事が来ました。これを
聞いた仲間は、おどり上がらんばかりに
喜びました。

 筏の中は、一段と活気が盛り上がり、掛け声も
力がついてきました。及川氏は、互いの位置を
見失わないように鈴木兵曹に呼びかけ、返事を
もらいました。次第にはっきり聞こえる返事に、
士気が上っていきました。

 筏を漕ぐ人達は、負傷も疲労も忘れて、
掛け声ばかりが暗い海に響いていましたが、
ついにボートに到着しました。

 ボートは、敵が残していった救助艇でした。
筏を、ボートの横付けすると、直ちに移乗を
はじめました。

 軽傷者は自力で、重傷者は無傷組の協力を
得て、移乗作業を行いました。移乗作業中、
傷口をつかんでしまい、騒ぎが起きましたが、
無事に終わりました。及川氏は、海底に
もぎとられる懸念が解消したことに、
安堵しました。

 ボートへの移乗が完了すると、次に
考えなければならないのが、一刻も早く
敵制海域を脱出することでした。

 ボートには、櫂が二本ありましたが、
これで脱出することは、力尽きている
今の乗員たちには不可能と思われました。

 なんとしても、エンジンを動かす必要が
ありました。


紹介書籍:駆逐艦「神風」電探戦記
著者: 「夕雲」及川幸介、「早霜」岡本辰蔵、「神風」雨ノ宮洋之介
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