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駆逐艦早潮 離礁 [駆逐艦早潮]

 腹一杯に資材や人員を積み込んで、
生粋の深くなった木製の短艇が、かなりの
速度で珊瑚礁に乗り上げると、衝撃で
艇底を損傷したり、推進機を破損
してしまい、航行不能に陥ります。

 こうなると、陸地を目前にしながら、
涙をのんで艇を捨てて引き返すか、
ガダルカナル島に居残るはめに
なったりしました。

 先任将校が、海図で詳細に説明して
いたのは、この事故をおもったから
でした。

 岡本氏は、やむなく、艇員3人と
一緒に、珊瑚礁に降り、半身を海水に
つけたまま、渾身の力を込めて、艇を
押し出しました。

 4人が海に飛び込むだけで浅くなった
艇の吃水と、死にものぐるいの馬鹿力が、
功をなし離礁することに成功しました。

 幸いにして、船底にも推進機にも
大した損害は見当たらず、素足で
飛び込んだ艇員が、珊瑚礁で足を
痛めた程度でした。

 後続の短艇にも注意をうながし、
速力を落として、ツメざおで
珊瑚礁の切れ目を探しながら
進みました。

 珊瑚礁の切れ目が見つかり、後続の
短艇も次々とこの切れ目から進入し、
全艇とも無事に接岸する事が
できました。

 海岸は白い砂地で、艇首をその砂地深く
のし上げたところで、ただちに揚陸作戦が
開始されました。途中の予期せぬ事故で、
時間を食ったので、万事急がなくては
なりませんでした。


紹介書籍:駆逐艦「神風」電探戦記
著者: 「夕雲」及川幸介、「早潮」岡本辰蔵、「神風」雨ノ宮洋之介
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駆逐艦早潮 闇の恐ろしさ [駆逐艦早潮]

 岡本氏は、この時の闇の恐ろしさを、
戦後になっても忘れることができないで
いるとしています。

 内火艇には、羅針盤はなく、空も海も
ただ黒一色で、何一つ目標になるものが
ない状態でした。ただ、勘によって艇を
進めていただけでした。

 岡本氏は、もしも、方向が間違って
いたら、どんな大事になるかと、心中
密かに起こる動揺を禁じ得なかった
としています。

 そのため、待望の青ランプが薄ぼんやりと
見えてきた時は、心からホッとし、天は
見捨てていなかったと感じていました。

 岡本氏は、「神様、仏様」の心境でしたが、
これを悟られないように、大声で、「青ランプが
見えてきたぞ」と怒鳴っていました。艇長は
元気よく返事してきました。

 しかし、青ランプは、艇の針路からだいぶ
右にずれていました。

 針路が大きく左にずれていることを示す
ものであり、このまま進んだら、敵飛行場
近くの海岸に、モロにぶつかることに
なりました。

 岡本氏は、冷気を感じつつ、「面舵」と命じ、
針路を変更しました。ところが、その瞬間に、
ゴリゴリという異様な音とともに、艇が震動
して停止しました。

 変針に気を取られ、珊瑚礁に乗り上げて
しまったようでした。これまでも、揚陸作戦を
行うと、1そうぐらいは必ず珊瑚礁に接触
したり、座礁したりしていました。

 水中をのぞくと、船底をかんだ珊瑚礁一帯が、
プランクトンの1種が放つ光のせいで、
ギラギラと光って続いていました。

 後進をかけたり、ツメざおで艇を押したり
しましたが、艇はびくともしませんでした。


紹介書籍:駆逐艦「神風」電探戦記
著者: 「夕雲」及川幸介、「早潮」岡本辰蔵、「神風」雨ノ宮洋之介
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