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駆逐艦早潮 敵機の攻撃 [駆逐艦早潮]

 岡本氏がいた士官室の昇降口のある
甲板は、ちょうど二番砲塔の真下に
ありました。

 砲塔の下にある弾薬庫からあがってくる
弾薬は、この甲板で、砲塔内に供給する
ことになっていました。

 岡本氏が昇降口に上ってきた時には、
砲塔内からの流血で、弾薬供給室の
甲板をぬらしていました。外を見ると
すでに暗くなっていました。

 暗い中でも、足元に、多数の人が
倒れているのがわかり、戦死者と
重傷者ばかりのように感じられました。

 岡本氏は指揮する二番機銃台も、一部が
破壊され、すでに使用不能におちいり、
射手の一等水兵は、機銃座についたまま、
戦死していました。この射手は、昨日、
ラバウルから乗り込んだ定期補充員
でした。

 岡本氏は状況がわからず、士官室に
降りている間に、敵機が後部から襲撃
してきて、あっという間にこの惨事に
なったものと判断しました。

 そして、この惨事になったのは、
直撃弾ではなく、至近弾による
爆風によるものだと感じました。

 至近弾であっても、駆逐艦のような
小艦は、乗員もろともなぎ倒すには
十分な威力でした。

 想像を絶する大きな被害に驚いた
ものの、直ちに残る一番機銃を
指揮して、襲ってくる敵機と
交戦をはじめました。

 しかし、主砲からの攻撃は一発も
ありませんでした。岡本氏は、
掌砲術長として、主砲の状況を
確認する必要を感じ、第二
砲塔内に入っていきました。

 第二砲塔内は、まさに悲惨の一言で、
岡本氏は、主砲が攻撃しないことから、
抱いていた悪い予感がズバリ的中したと
感じました。


紹介書籍:駆逐艦「神風」電探戦記
著者: 「夕雲」及川幸介、「早潮」岡本辰蔵、「神風」雨ノ宮洋之介
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駆逐艦早潮 正体不明の飛行機 [駆逐艦早潮]

 右舷前方に飛行機を確認した岡本氏
でしたが、この飛行機は、まもなく姿を
消してしまいました。

 艦橋から、「その場に休め」の号令が
発せられ、対空戦闘配置についたまま、
待機することにしました。

 対空配置のまましばらく緊張が続いた
ものの、敵機らしき機影は現れず、
早潮はさらに速力を上げて、
目的地に近づいていきました。

 岡本氏は、対空戦闘待機と同時に、
上陸舟艇の指揮官任務が加わって
きました。

 しかも、その時は、刻々と近づいて
いました。早潮が、陸岸に接近すると
同時に、重大な任務がスタートすることに
なります。

 今夜の上陸作戦は、正体不明の機影が
出現したとあって、大丈夫とはとはいかない
ような気がしました。

 まずは、ガダルカナル島なみに、一通りの
出発準備をしておく必要がありました。
岡本氏は、戦闘待機を離れ、準備のため
士官室に降りていきました。

 愛用の軍刀と、拳銃などはあらかじめ、
上陸舟艇の第一陣として出発する第一
内火艇に積み込んでありました。

 服装を、艦内防暑服から、陸戦隊用の
軍装に着替え、その他諸々の身の回りの
整理を行ったところで、士官室の一角に
腰をおろし、一息つきました。

 その瞬間、カチンという異様な金属音が
聞こえ、岡本氏の左脚のかかとのあたりに、
小指大の長方形をした弾片があたり、
足元に転がっていきました。そこから白い
糸のような煙がたちのぼってきました。

 おいでなすったと判断した岡本氏は、
身を翻して、上甲板へと駆け上がって
いきました。


紹介書籍:駆逐艦「神風」電探戦記
著者: 「夕雲」及川幸介、「早潮」岡本辰蔵、「神風」雨ノ宮洋之介
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