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駆逐艦早潮 夢のようなひととき [駆逐艦早潮]

 ラバウルは、前線基地でありながら、
意外なほど静かで、行き交う小艦艇の
姿にも、どこかのんびりした風景が
伺われました。

 激烈だったガダルカナル島への
増強作戦に明け暮れていた岡本氏らは、
母港にでも帰ってきたような心の
安らぎを感じました。

 動かない大地を思いっきり踏みしめたい
という欲求が自然と湧き出てきました。しかし、
入港直後、岡本氏が思い描いていた夢の
ようなひとときは、見事に吹き飛びました。

 街の佇まいも港内の静けさも、早潮が
入港すると、戦場風景となりました。
岡本氏は、掌砲術長として戦闘で
消耗した弾薬の補給に大忙しと
なりました。

 さらに、燃料や糧食の積み込みに、
てんてこ舞いさせられました。しかも、
岡本氏が、陸上の弾薬庫から、弾薬の
供給を受けて、早潮に戻ってみると、
多数の特別陸戦隊の兵士たちが、
諸物件の積み込みに大わらわの
最中でした。

 しかも、早潮以外の駆逐艦もいつの間にか
入港しており、それらの駆逐艦も、早潮同様、
積み込み作業に懸命にあたっていました。

 次の作戦は、早潮艦長が指揮する、
ニューギニアのラエとサラモア地区への
増強補給部隊の輸送ということで、今夜には、
ラバウルを出撃するということでした。

 数時間のラバウル入港中の忙しさは
格別で、休養など思いもよらず、ラバウル
入港直前に思い描いたことは、本当に夢の
ようなひとときとなってしまいました。

 しかも、この入港時、さらに予想も
しなかった乗員の定期補充交代まで
行われることになりました。


紹介書籍:駆逐艦「神風」電探戦記
著者: 「夕雲」及川幸介、「早潮」岡本辰蔵、「神風」雨ノ宮洋之介
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駆逐艦早潮 ラバウル入港 [駆逐艦早潮]

 1942年11月23日、早潮は、
単艦で、海軍前線基地のある
ラバウル港に、その勇姿を
現しました。

 外舷のところどころは赤くさび、船体には
白い塩が吹き出していました。灼熱の陽光に
照らされた早潮は、戦場を駆けめぐってきた
歴戦艦そのものの姿でした。

 実際、早潮は、ガダルカナル島への
増強作戦に、死に物狂い戦いを続けており、
ラバウルへの入港は、思いがけない出来事
でした。

 任務を知らされていない岡本氏ら
乗員は、不意の入港に、久しぶりの
休養があるかも知れないと期待する
向きもあったようでした。

 ラバウルはまだ戦場になっておらず、
平穏な場所でした。しかし、いつ空襲が
あるかも知れない戦場であることに
変わりはなく、錨を投じての停泊とは
いかず、艦の推進機を止めただけの
ものでした。

 岡本氏らは、ここ4ヶ月はこのような
状態が続いており、入港しても緊張を
強いられていました。そして、艦が停止
する直前、「入港用意」の気前の良い
ラッパが鳴り響きました。

 艦が停止するまでの間、乗員は、
自分たちがラバウルの街角に立つ
自分の姿を思い浮かべました。

 ラバウルは、遠くにある活火山が高く
そびえ、一幅の絵画のように、白い煙を
はいていました。

 麓には、深い密林があり、それが港まで
せまっていました。人家の屋根も樹々に
囲まれており、熱帯地らしい風景でした。

 その一方で、上陸桟橋には、赤錆びた
船体を晒した商船の残骸がありました。
日本軍が占領した当時の遺物で、
戦場であることを示していました。


紹介書籍:駆逐艦「神風」電探戦記
著者: 「夕雲」及川幸介、「早潮」岡本辰蔵、「神風」雨ノ宮洋之介
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