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駆逐艦神風 艦長春日均中佐 [駆逐艦神風]

 出撃のたびにこれで最後という覚悟を
持つと同時に、「今度もひょっとしたら、
うまくやり通せるかもしれない。今度は
必ず生還してみせるぞ。」という不思議な
自信のようなものも、生まれてきました。

 同時に、「神風は絶対にやられない、
やられるはずがない。」根拠はなくても、
乗員の胸中には、そう思わせるものが
ありました。

 それを支えていたのは、神風の艦長
春日均中佐の絶妙な操艦術と、戦闘
熟練度、人間的魅力でした。

 それに、士官たちの統率力、下士官兵の
団結力、それらが乗員全員の精神活動の
能力を、極限いっぱいまで発揮させ、
物理的に老朽した艦そのものも、
奮い立たせていました。

 神風という艦名には、特攻隊のイメージが
オーバーラップしましたが、突っ込んでいく
果敢さの裏側には、いくばくかの神がかり的な
信念もありました。

 春日艦長は、いつも艦内帽のあご紐を、
頭の上に渡らせて、ときにステテコ姿のまま、
重い革のスリッパをバタバタ音を立てて、
艦橋のラッタルを上り下りしていました。

 たまに電探室に顔を出すと、巻き煙草を咥えて、
「火をくれ」と言われました。艦長の覗いている
右手の壁に、直流のスイッチ盤が取り付けてあり、
当直員が、手を出して、「ここでつけてください。」と
把手を下げていました。

 そこから、青い火花が飛び、艦長はそれで
タバコに火をつけていました。艦長はその事を
知っていて、壁際から顔を出していると言えます。

 海軍の兵隊は、どの配置になっても、
必ずどこでライターに相当するものがあるか、
考え出していました。


紹介書籍:駆逐艦「神風」電探戦記
著者: 「夕雲」及川幸介、「早潮」岡本辰蔵、「神風」雨ノ宮洋之介
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駆逐艦神風 独自の行動 [駆逐艦神風]

 神風は、リンガ泊地で、重巡洋艦足柄、
羽黒とともに、訓練をして、その合間に、
走り使い役として南十字星の下にきて、
寧日働き詰めでした。

 5月になり、神風は、サイゴンにいき、
その帰り道は、ジャカルタ、アンダマン諸島と、
物資輸送船の護衛任務に、忙しく明け暮れました。

 美しい街並みのサイゴンも、何度も行くうちに、
爆撃の黒煙が空をおおうような変わり方を見せ、
すでに完全に内地との交通は壮絶し、一方、
沖縄を掌中にした連合国軍は、孤立化させた
南西方面にまで、余力をまわしてよこすまでに
なりました。

 広い南方の、あちこちに残存する陸軍と、
雑木林程度の小艦隊しかない状態で、制空権を
失い外洋に出ることもできなくなり、にわかに
活発化した戦場で、神風は、独自の行動を
よぎなくされました。

 神風は、護送する船団に組み込まれましたが、
船団と行っても、船の大きさはマチマチで、
出撃のたびに沈められるので、最初は、
大型タンカーもあったものが、回を
重ねるごとに目に見えて船は小さく
なりました。

 護る方も、古い石炭燃料を使う掃海艇との
共同作戦から、ついには神風1隻になって
しまいました。輸送船がやられても、神風
だけは生き残り、ついには、どこへ出かける
にも、護衛する神風が最も大きな船となりました。

 一艦だけ残る優秀な艦となった神風は、
B24や潜水艦から文句なしに標的とされ
ました。それでも、いつも人命救助を
あくことなく続けていました。

 そして、出撃のたびに今度こそは最後かも
しれないと覚悟しました。


紹介書籍:駆逐艦「神風」電探戦記
著者: 「夕雲」及川幸介、「早潮」岡本辰蔵、「神風」雨ノ宮洋之介
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