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駆逐艦神風 ヤカン訓練 [駆逐艦神風]

 電探の艤装をしている帰還の夜、
雨ノ宮氏らは、「ヤカン訓練」と
称する作業を行っていました。

 内容は、ストーブにヤカンを乗せて、
ギンバイしてきた魚や肉をぶつ切りに
して煮込み、消灯後に酒を酌み交わす
ことでした。

 外泊のない下士官にとって、雪に
閉じ込められたところで行う唯一の
楽しみで、本来まずいことですが、
公然となっていました。

 電探員の間でも、ストーブの代わりに、
はんだごて用のコンロを利用して、
「ヤカン訓練」を行っていました。

 ある夜、ヤカン訓練を行っていた時に、
小太りの少尉が入ってきました。何を
しているのかと尋ねられ、ヤカン訓練
ですと返答しました。

 すると、少尉は電探室の長である雨ノ宮に
対し、「たるんでいる」として殴って
きました。

 少尉は、雨ノ宮氏に「俺が誰か分かるか」と
聞いてきました。雨ノ宮氏は、「わかりません」と
返答しました。すると、「俺は、本館の電測士だ。
今日着任した。よく覚えておけ。」と興奮の
あまり出ていきました。

 この、電測士の高井少尉は、艤装の具合を
見るために上ってきたようでした。最初の
出会いはこのような状況ですが、幾日か
すると、高井少尉も談笑の輪に、進んで
加わるようになりました。

 それどころか、「真空管をやるので、
士官室に来い」といわれ、ついていくと、
他の士官に見つからないように、ビール瓶を
渡され、「その真空管を壊すなよ。」と
言われました。

 平野上等水兵は、「電測士も話せる人
ですね。」と感心していました。


紹介書籍:駆逐艦「神風」電探戦記
著者: 「夕雲」及川幸介、「早潮」岡本辰蔵、「神風」雨ノ宮洋之介
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駆逐艦神風 電探室 [駆逐艦神風]

 大湊に帰還したカミカゼは直ちに
ドック入りして、北陽警備の任を解かれ、
連合艦隊付属となりました。

 そして、野風といっしょに南方戦線に
出撃の命令を受けました。ここで、初めて
電探が搭載されることになりました。

 電探室は、艦橋の真下の海図羅針儀室
だったところを使用しました。元羅針儀室
だったこともあり、周囲は砲金製で2坪にも
満たない広さでした。

 隣には電信室があり、こちらも二坪ほどの
広さであり、さらに一坪にも満たない暗号室が
ありました。艤装作業を進めている間、乗員は
交代で休暇を取りました。

 そうこうする内に、電探室は出来上がって
いきました。前面の楕円形部分に厚い木製の
棚をカウンター状にしつらえ、何本もの
コードが束になってはい回されました。

 その配線は、クリスマスの飾りのように、
垂れ下がっていました。電探室の外にある
旗甲板には、対空砲の機銃座を増設のため、
溶接作業をしていました。

 こちらも連日、祭日の花火のような騒ぎに
なっていました。この溶接作業が終わるのを
待って、ブラウン管や定電圧調整器などの
機器を据え付けていきました。

 後方の電信室との隔壁側に整流器や、
変調器、発信機、全波型電波探知機や
受信機が据え付けられました。こうして、
狭い電信室は、機械で一杯になって
いきました。

 今回神風に搭載した電探の正確な名称は、
「22号改四長短波電波探信儀」で、
総重量は1tにもなる堂々としたもの
でした。

 雨ノ宮氏は、老いた神風をおばあさんと
すれば、新兵器の電探は、派手なリボンに
なっているとしています。


紹介書籍:駆逐艦「神風」電探戦記
著者: 「夕雲」及川幸介、「早潮」岡本辰蔵、「神風」雨ノ宮洋之介
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