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駆逐艦神風 電探員の戦争 [駆逐艦神風]

 電探は、故障が多いといえますが、
原因は大きく以下の3つでした。

 1.真空管の不良
 2.接触不良
 3.機器(コンデンサ、抵抗など)の不良
です。

 もともと脆弱でしたが、戦闘で砲撃や
銃撃を行ったり、爆弾や魚雷の投下の
震動で、予期しない故障を惹起することが
ありました。

 対空戦闘の際は、高角砲弾を装填して
撃ちます。特に艦橋直後の二番主砲を前方に
放つと、砲弾が電探室をかすめ、爆風の示す
威力はものすごいものがありました。

 整流器の真空管は、点灯していれば、
たちまち管球の中で沸騰状態となり、
燃え上がりました。

 対空用の連装機銃や、単装機銃も対空射撃を
一斉に始めると、艦全体の空気が、大掃除の際の
畳を叩くように、バタバタをと鳴りはためき、
爆風は相当な衝撃でした。

 電探を、大湊で据え付けた時、木台に
緩衝ゴムを念入りに当てて、締め付け
ましたが、各部がたちまちガタガタに
緩みました。

 横柄な書記を納得させて、真空管の予備を
十分に手持ちしていたことが、その後、
大いに役立ちました。

 電探員は、戦闘時、半裸で蒸し上がりながら、
小さな部屋一杯にテスターやドライバー、
半田ごてを広げて、半田付けしたり、
ビスを外したリ、接触部をサンド
ペーパーで磨いたりの、「分解⇒組立戦争」を
していました。

 しかも、艦が速力を増すと、電波発射器が
強風の抵抗でたちまち旋回不能となり、
導波管が何度も破断しました。

 しまいには手動で動かす事になりましたが、
なぜか、大事な場面では立派に作動し、
神風を助けてくれました。


紹介書籍:駆逐艦「神風」電探戦記
著者: 「夕雲」及川幸介、「早潮」岡本辰蔵、「神風」雨ノ宮洋之介
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駆逐艦神風 感電の危機 [駆逐艦神風]

 日々、危機感は、惻々と身にせまって
いましたが、赤道近い南の海は、凪の時は
若草色に輝き、湖のなごやかさで、一体
どこに戦争があるのか、疑わしいくらい
平和に見えました。

 しかし、突然、敵機があらわれ、白波を
蹴立てて、雷跡がせまってきました。

 「総員で見張りをせよ」という通達が
出ていましたが、乗員は非番であっても
甲板でゴロゴロしながら、見張りを
かねていました。全員が、緊迫感に
ヒリヒリしていました。

 しかし、水平線や、空、雪は、一日の内
一刻も同じ姿をしておらず、千変万化
していたので、退屈はしませんでした。

 ことに、マレー半島に接岸する航行の際は、
陸岸の景色、島の形、漁構、ジャンクなど、
見ていて楽しいと感じていました。

 暑いので、居住区にはおらず、甲板で、
雑誌を読んだり、昼寝したり、雑談を
しながら、絶えず海の上に視線を
漂わせていました。夜も同様に
甲板に寝ました。

 こうした中、雨ノ宮氏らは、電探の外板を
外して機器をむき出しにしていました。日中は
もちろん夜でも、灯火管制で入口に毛布を厚く
垂らした室内は高温になりました。しかも、
真空管は内部温度を上昇させました。

 外板を外すのは当然の措置でしたが、
兵器の説明に、「このコンデンサが」と
鉛筆を近づけ、数万ボルトの電圧が、
鉛筆の芯を通して電撃を与える事が
ありました。

 また、電探員も上半身は裸同然でしたので、
裸の肘を、機器に突っ込んで感電する危険も
ありました。電探員は、感電の危険に晒され
ながら、任務をこなしていたと言えます。


紹介書籍:駆逐艦「神風」電探戦記
著者: 「夕雲」及川幸介、「早潮」岡本辰蔵、「神風」雨ノ宮洋之介
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