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駆逐艦神風 探照灯の配置 [駆逐艦神風]

 雨ノ宮氏は、目のかたきにされやすい
損な立場となりました。

 それでも、この当時は暗記力も旺盛だった
こともあり、数十種類の伝令用モールス信号を
一晩のうちに全部覚え、砲台じゅうの話題に
なりました。

 これがいい標的となりました。生意気だ
ということで、夜の甲板整列では、必ず
呼ばれ、バッター(軍人精神注入棒)を
ふるわれました。

 そのため、呼び出されるたびに、
極度に怯え、教官の言葉は殆ど
頭に入らなかったようでした。


 このころ南方の戦況は次第に激しさを
増し、兵隊の耳にも、景気のいいもの
ばかりではなくなりました。

 海軍内にも、悲観的な予想を
するものがあり、城山砲台にも、
戦傷をこうむった下士官も
ぼつぼつ送り込まれました。

 このような人達は、厭戦気分となり、
勤務時間以外は酒浸りとなり、「この
砲台は極楽だよ。だが、この極楽も
いつまで続くかわかったもんじゃねえ。
敵の艦砲射撃で、たちまち木っ端微塵に
なるぞ。」と脅しをかけられました。

 雨ノ宮氏は、極楽とまではいかないまでも、
たしかに良いところだと感じていました。
探照灯の配置は、楽しいと感じていました。

 砲術長が外出した日に、指揮所からの
命令に沿って、探照灯を俯角いっぱいに
とって、館山の街に照準を定め、「目標、
松之家の二階」と号令し、そこで遊興
している、先任下士官めがけて照射する
ということを行いました。

 これは、指揮所からの悪ふざけの命令に、
雨ノ宮氏が乗っかったということですが、
遊びに行く古兵にこのようないたずらを
仕掛けていました。


紹介書籍:駆逐艦「神風」電探戦記
著者: 「夕雲」及川幸介、「早潮」岡本辰蔵、「神風」雨ノ宮洋之介
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駆逐艦神風 新配属先 [駆逐艦神風]

 雨ノ宮氏は、横須賀警備隊付への配属と
なりました。どこか他所へでかけて行くのかと
多少期待していた雨ノ宮氏でしたが、同じ
建物つづきの兵舎だったということで、
少なからずがっかりしました。

 他の部隊ならば、厳しくはあっても余裕が
あると聞いていたのですが、お隣は、特に
訓練が厳しいらしく、ときおり垣間見えた
ところでも、あまり住心地が良さそうには
見えませんでした。

 そして移転し、前よりはるかに辛い訓練に
耐えることになりました。班長は、気難しく
神経質な男で、何かというとよく殴りました。

 雨ノ宮氏は、比較的殴られなかった方だと
していますが、それでも、眼鏡が粉々になった
ことがありました。

 ここで2ヶ月ほど経過したある日、雨ノ宮氏は
数人のカラスと一緒に班長室に呼ばれ、
千葉県の城山砲台に配置換えの通告を
受けました。

 迎えに来た下士官に引率されて、浦賀に
向かい、機帆船で東京湾を横断し、館山
砲術学校の桟橋に到着しました。

 そこから7kmほどのところにある館山市外の
丘が城山でした。衣囊を肩に、汗まみれの
カラスたちは、坂を登りました。

 砲台と言っても、中尉一人が指揮する
小さなもので、どこからも海が見える丘の
所々に、隠蔽した10cm高角砲数門があり、
連装機銃、聴音機、探照灯一基を据え
付けたものでした。

 雨ノ宮氏は、迎えに来た下士官を
教員として、訓練の続きを受けました。
訓練後、担当の配置を決められ、
雨ノ宮氏は、探照灯の伝令と
なりました。


紹介書籍:駆逐艦「神風」電探戦記
著者: 「夕雲」及川幸介、「早潮」岡本辰蔵、「神風」雨ノ宮洋之介
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