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駆逐艦神風 荒天下での航行 [駆逐艦神風]

 北方警備の任務は、海防艦福江と一緒に、
荒れ狂う北辺を目指した航行でした。

 氷点下の海は、触れるもの全てを凍結し、
甲板上のあらゆる物に氷柱がつきました。

 荒天下での航行は、ピッチング(前後揺れ)、
ローリング(横揺れ)が激しく、60度以上
傾斜して復元する時は、命拾いする
思いでした。

 僚艦を見ると、反対方向に60度あまり
傾いており、相対的に120度以上の
正反対の位置に眺められる事に
なりました。

 波濤の暴れる日は、ハッチを全て閉鎖
しており、用があって飛び込んでくる
兵士がいると、海水のかたまりも一緒に
飛び込んできました。

 舵をとると、船体は悲鳴に似たきしり声を
上げ、水圧を受ける側の舷側の鋼板(厚さ15mm)は、
目に見えてたわみました。荒天の時は、
居住区の食卓を全部畳んで平にし、
当直以外はあぐらをかいて過ごしました。

 夜間は、毛布を敷いて雑魚寝していますが、
艦が傾くと一方へ滑っていきました。
そのような時は、半分眠りながら、
舷側に激突する前に、両足を
つっぱって防ぎます。

 波と摩擦の歯ぎしりする音が響き渡り、
眠れませんでしたが、このような時は、
見栄も外聞もなく毛布をかぶって、
必死に寝ることにしていました。

 他の乗員も、目を覚ましていながら、
互いに一言も口を、ききませんでした。

 このような駆逐艦生活を送ったことで、
大湊に帰還するころには、日常生活に
なれることになりました。


紹介書籍:駆逐艦「神風」電探戦記
著者: 「夕雲」及川幸介、「早潮」岡本辰蔵、「神風」雨ノ宮洋之介
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駆逐艦神風 乗艦 [駆逐艦神風]

 神風に乗艦した雨ノ宮氏らは、後部居住区の
電信科テーブルに居候をすることになりました。

本来居候なのですが、結局、終戦までここで
過ごすことになったとしています。しかも、
神風には、肝心の電探設備が見当たりません
でした。

 電信長に確認すると、電探に関する限り、
情報が秘匿されており、艦内でも知る人が
少ないようでした。

 神風は、これから北方警備の任務で
船団護衛に当たることになるが、
その後に、新規に設置される
のではないかということでした。

 神風は、雨ノ宮氏が配属された時は、すでに
建造から21年経過しており、老朽艦といっていい
艦でした。しかし、かくしゃくとしており、速力は、
37ノット出るので、運動性能は抜群でした。


 朝食の時間、居候の雨ノ宮氏らは、食卓が
あくまで、海軍体操をして過ごしました。号令も
凍てつく寒風の中、黙って立っていられるはずが
なく、かと言って居住区ではじゃまになるから
でした。

 しかし、これも苦情が出て、はしごの下に
整列して、待機することにしました。居候で
気苦労が多かったと言えます。

(追記)
 最盛期100隻を越える艦数を誇った
駆逐艦の中で、終戦まで生き残ったのは、
最も旧型の峯風型から数えると、

沢風、汐風、夕風、波風、神風、春風、
特型の潮、響、
陽炎型の雪風、
秋月型の冬月、花月、春月、夏月、涼月、宵月、
丁型の、榎(えのき)、萩、初梅、初桜、樺(かば)、
楓、柿、樫、榧(かや)、欅(けやき)、桐、楠、
槇(まき)、楢(なら)、梨、楡(にれ)、雄竹、
椎(しい)、杉、菫、竹、椿、蔦となります。

駆逐艦消耗戦だったと言えます。


紹介書籍:駆逐艦「神風」電探戦記
著者: 「夕雲」及川幸介、「早潮」岡本辰蔵、「神風」雨ノ宮洋之介
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