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駆逐艦神風 平野一等水兵 [駆逐艦神風]

 雨ノ宮氏が配属された、通信学校定員分隊は、
学校で使用する図表を保管する部隊でも
ありました。

 当然借りに来るのは、講習生や予備学生など
でした。彼らはきちんと一列に並んで、部屋の
外で待っていました。

 雨ノ宮氏ら、定員分隊が対応しますが、
講習性が借りにきたものがないということがあり、
「そんなものはない」と哄笑しながら返答し、
講習生も笑っていました。そして
聞き直してこいと命じます。

 定員分隊のほうが、立場は強く、講習生の時に
いじめられていたことへの報復を行っているという
ことでした。しかし、対象となるのは、雨ノ宮氏の
以前地位だった講習生に対してであり、ほめられた
ものではないといえます。

 ある日、雨ノ宮氏の同僚が、一人の講習生を
しぼっているのが目につきました。しぼられている
講習生を見ると、以前、城山砲台で、「次の講習に
行く」と言っていた平野一等水兵でした。

 平野一等水兵は約束を守って、講習生として
通信学校に来ていました。この後、平野一等水兵とは、
宿舎で一度あったきりで、雨ノ宮氏は忘れかけて
いました。しかし、この後縁があり、運命的な
再会をすることになりますが、この時は、
知る由もありませんでした。

 その後、定員分隊は、神奈川県の藤沢在の
長後村にできた海軍電測学校に移転することに
なりました。数台の牽引用車両電探を軍用
トラックにつなぎ、運びました。

 暁闇をついて久里浜を出発し、横須賀市内を
通り抜け、出勤前の時刻に横浜駅東口に到着し、
小休止しました。


紹介書籍:駆逐艦「神風」電探戦記
著者: 「夕雲」及川幸介、「早潮」岡本辰蔵、「神風」雨ノ宮洋之介
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駆逐艦神風 通信学校定員分隊に配属 [駆逐艦神風]

 海軍は電探の開発の遅れを取り戻すべく
必死になっていましたが、これが、電探
講習生を一日でも早く優秀な取扱者に
するという方針になり、軍人精神注入棒に
よる制裁を、苛烈なものにすることに
なりました。

 そのため、雨ノ宮氏らは、終日体罰攻めに
追いまくられる事になりました。しかも、
講習が終わり、配置を発表されましたが、
雨ノ宮氏は残留となり、通信学校定員分隊に
配属となりました。

 雨ノ宮氏は、学校の雑用や、講習時の
掛図に用いる線図描きなどの仕事が
回ってきました。幸い、先任将校が
柔和な人の良い人だったため、訓練の
ときとは一変して、心身ともに余裕のある
毎日でした。

 雨ノ宮氏は、この機会に、通信学校中、
どこにもいかな行かないところがないくらいに、
自由に我が物顔で歩き回りました。しかも、
訓練生のように、駆け足をする必要は
ありませんでした。

 制裁を受けている訓練生を窓からのんびり
眺めていても、誰からも咎められませんでした。
毎日、消耗する模造紙描きの図を、数名の
兵たちで冗談混じりにタバコを吹かしながら、
裏張りをしたり、新規に描きなおしたりして
いました。

 不良図を見つけると、訂正するというのも
仕事でした。また、自分がほしいと思う図を
新たに描くこともありました。酒保品を持ち
込んで、ワイワイ騒ぎながら、楽しく作業を
していました。

 さらに、この仕事には、ささやかながら
楽しみがありました。


紹介書籍:駆逐艦「神風」電探戦記
著者: 「夕雲」及川幸介、「早潮」岡本辰蔵、「神風」雨ノ宮洋之介
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