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巡洋艦最上 防水作業 [巡洋艦最上]

 6月6日は開け放たれました。

 12~14ノットの速力で航行する
最上は、音無しのかまえよろしく、
警戒を厳にしていつでもござんなれと
待ち構え、艦内には、ピンと糸を張った
ような空気が満ちていました。

 1万tもある鉄の城が、28ノットで
駆けていたのだから、エネルギーは
相当大きいに違いなく、たとえ触接程度
でも、無傷で済むはずがありませんでした。

 三隈と触衝の瞬間、曾禰氏は、火柱が
立つのを見ました。てっきり、敵潜水艦の
攻撃を受け、艦首部に命中したのでは
ないかと錯覚したくらいでした。

 後日わかったことですが、艦首には
航空燃料倉庫があり、若干の燃料が
入れてありました。

 この倉庫は、衝撃で跡形もないほどに
なっていましたが、高オクタン揮発油が
発火・爆発したためだろうと推定されて
いました。

 なにはともあれ、明朝の大事な任務を
前に、しまったという思いと、潜水艦伏在
海面でもあり、艦の保全に全力を上げるしか
ありませんでした。

 曾禰氏は、司令官に事故の概要と、
損害の状況を報告し、艦内防水を指令
して、損傷部を詳しく調査させ、徐々に
減速し、ついで、後進行動をとりました。

 潜水艦が潜んでいる以上、停止することは
最も危険で、後進して艦を移動させながら、
防水作業を行わせました。調査が進み、
第一砲塔下の艦長私室から前は、
ぐちゃぐちゃに破損していることが
分かりました。

 最上が、これ以上の浸水の心配は
ないと確認できるようになったのは、
数時間後でした。副長以下の指揮、
努力がやっと功を奏しました。


紹介書籍:重巡「最上」出撃せよ
著者: 「矢矧」井上芳太、「那智」萱嶋浩一、「熊野」左近允尚敏、最上:曾禰章、「五十鈴、摩耶」井上団平
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巡洋艦最上 防水完了。新たな問題。 [巡洋艦最上]

 やがて、副長から「応急防水完了。」という
報告がありました。曾禰氏の心の中でも、
1分でもはやく、この報告を得たいと
思っていました。

 夜が明ければ、ミッドウェー島からくる
敵機の攻撃を受けるのは必定でしたので、
これに応ずるためには、一刻も早く後進を
止めて、全身運動をとって、艦の自由を
少しでも保持することが先決でした。

 曾禰氏は、艦内各部、特に、機関室、
缶室、発電機室など、艦底付近に配置
されている乗員に状況一般を通告し、
やがて起きるであろう、対航空戦闘に
そなえるように命じました。

 ついで、「後進を停止、徐々に前進」を
指令し、綿密に防水の状況を検討させました。
一気に速力を増やせば、重荷がかかり、
第一防水隔壁を破壊することに、なりかね
ませんでした。

 艦首を失った最上は、速力を増すごとに、
ものすごい波を左右にかき分ける結果と
なりました。しかし、「防水異常なし」の
報告を受け、曾禰氏は、どの程度まで
耐えられるか、ためしてみようと
考えました。

 曾禰氏は、全力まで馬力を上げ、艦速を
測定してみました。すると、28ノット
出せる馬力で、16ノットしか出ません
でした。

 しかも、予想外の燃料消費で、むやみに
この速度で航行するわけにはいきません
でした。

 しかし、今は非常時であり、最も経済的な
速力では、対空戦闘を乗り切ることは
できないので、回避の際は、全力運動
しようと決めました。

 この時、三隈は、最上前方を警戒しながら
航行していました。


紹介書籍:重巡「最上」出撃せよ
著者: 「矢矧」井上芳太、「那智」萱嶋浩一、「熊野」左近允尚敏、最上:曾禰章、「五十鈴、摩耶」井上団平
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