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巡洋艦最上 三隈沈没 [巡洋艦最上]

 朝潮の報告を聞いた曾禰氏は、三隈は
ついに沈没したのかと暗然たるものが、
しばし胸中を去来しました。

 最上では、戦闘が一段落をつげるとともに、
「艦内かたづけ」の号令がかかりました。この
後始末は、戦闘にも劣らない作業でした。

 このころ、艦橋にいた信号員から、「艦長、
背中に血がにじんでいます。」と言われました。
曾禰氏は、全く気づかなかったので、少量の
出血で、にじみ出たのだろうと考えました。

 このことを誰かが知らせたのか、軍医長が、
艦橋にきました。曾禰氏は、「忙しい負傷者の
手当の最中だろうから、私の方は、後刻でも
よろしい。」と言いましたが、軍医長は、
曾禰氏が着ていた防暑服を脱がせました。

 曾禰氏の背中には、爆弾の小さな破片が、
横になって入っているらしく、ピンセットが
相当深く入ると言っていました。今の時点
では、どうすることもできないようで、
応急処置で済ませました。

 その後、この破片は、そのまま放置され、
曾禰氏の体に埋まっているということでした。
痛みもなく、記念すべき物となっている
ようです。

 曾禰氏は、朝潮に、二回目の重傷者収容を
命じましたが、三隈の船体を認めることは
ありませんでした。

 こうなると沈没した以外の、なにものでも
なく、曾禰氏が確認できないだけという、
やるせない気持ちになりました。

 曾禰氏は、所在先任者として決断する必要が
ありました。曾禰氏は、周囲の状況と、朝潮の
報告から、通信長に、暗号電信の報告を
するように命じました。


紹介書籍:重巡「最上」出撃せよ
著者: 「矢矧」井上芳太、「那智」萱嶋浩一、「熊野」左近允尚敏、最上:曾禰章、「五十鈴、摩耶」井上団平
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巡洋艦最上 三隈被弾 [巡洋艦最上]

 三隈が黒煙を上げているのを見て、
曾禰氏は、異常を感じました。そこに、
三熊の高島副長から、信号がありました。

 「艦長重傷。いまより副長が指揮をとる。」
というものでした。艦長が重傷では、艦の
中心が失われたも、同然でした。

 しかも、三隈は、煙突に爆弾を受け、
速力が発揮ができなくなり、減速して
いました。この不運の爆弾で、機械室
指揮所が爆発し、機関長以下、多数の
戦死者を出したということでした。

 このため、逆に、最上が三隈の護衛を
しなければならない状況と、なりました。
曾禰氏は、不運の時は、不運が重なる
ものだと、感じました。

 曾禰氏は、しばらく戦況を見ていましたが、
三隈も苦戦しており、駆逐艦に、合間を見て、
三隈に横付けに近い状態に接近させて、
乗員の収容を命じました。しかし、この
作業中、またしても一集団の艦載機が、
むらがるようにして来襲してきました。

 この時、最上は、三隈の至近に停止
していましたが、これでは、危険だと判断し、
高島副長と、朝潮駆逐艦長に、「生存者
収容を一時中止し、日没頃再開する。」
と手旗信号で命じました。

 (荒潮は、この収容作業中、被弾により
舵が故障していました。)

 洋上は、明るくなるのも早いものの、
暗くなるのも早い傾向があり、午後になって
雲がだんだんと厚くなり、海上は薄暗く
なりました。

 日没頃になり、朝潮に、三隈地点に至り、
さきの作業を続行、終了次第最上に合同
せよ。」と発信しました。

 やがて何時間か経過し、朝潮より、
「三隈地点に艦影なし。付近を捜索
すれどもなし。」という報告が
きました。


紹介書籍:重巡「最上」出撃せよ
著者: 「矢矧」井上芳太、「那智」萱嶋浩一、「熊野」左近允尚敏、最上:曾禰章、「五十鈴、摩耶」井上団平
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