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巡洋艦最上 発電機室とつながる電話線 [巡洋艦最上]

 消火のために撒いた海水は、熱湯となって、
爆発の衝撃で曲がった甲板の隙間から、
機械室に入り込みました。

 機械室は、甲板が曲がった影響で、ドアが
変形し、開閉不能となっていました。そのため、
応急員は、さんざん手を焼いたようでした。

 こうなると、艦内は蜂の巣をつついたような
さわぎとなり、食事も何も、あったものでは
ありませんでした。こうした、飛行甲板や
上甲板での状況は、機械室、缶室、
発電機室にいた乗員は、分かりません
でした。

 それでも、発電機室の分隊長は、曾禰氏の
戦況報告を、部員に知らえて士気を鼓舞し、
逆に、頑張ってくださいとは励まされました。

 艦内で最も温度が高い発電機室からの
報告と激励であり、曾禰氏は、胸を
つかれる思いで聞いていました。

 発電機室も、ドアが開かない状態なので、
閉塞されたも、同様の状態であり、唯一、
電話線一本のみで、つながっているだけ
でした。

 戦闘の最中で、曲がったドアをどうする
こともできませんでした。ついに、機械室と
発電機室の乗員は、その持ち場で大部分が
戦死するに至りました。

 曾禰氏は、艦長として見殺しにしたわけ
ではないものの、優秀な乗員を失ったこと、
涙をのむ以上の悲痛さを感じて、いても
たってもいられない気持ちでした。戦死者の
半数は、この配置にいた乗員でした。

 敵機は、最上に爆弾を当てたことで安心
したのか、矛先を三隈に変更したようでした。
一瞬のおりを見て、曾禰氏は三隈を確認
しました。三隈は、火災でのようで、
黒い煙を上げていました。


紹介書籍:重巡「最上」出撃せよ
著者: 「矢矧」井上芳太、「那智」萱嶋浩一、「熊野」左近允尚敏、最上:曾禰章、「五十鈴、摩耶」井上団平
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巡洋艦最上 ついに被弾 [巡洋艦最上]

 敵機が迫ってくると、前方にいた三隈の
主砲が、遠雷のように響き、速くも防御砲火を
送って、少しでも最上を援護してくれている
ようでした。

 第一波は、至近弾程度で終わりましたが、
ホッとする間もなく、第二波がきました。
第二波は、第一波とは違う方向からの攻撃で、
いかに神技を持とうと、全てを交わすことは
できませんでした。

 最上は、第二波の集中攻撃を受け、数発の
命中弾をくらいました。このときから、
修羅場さながらの死闘が始まりました。

 一弾が、第五砲塔の天蓋に直撃し、大穴が
空いて吹き飛びました。砲塔内で、いましがた
まで防御砲火を送っていた砲塔員は、たちまちに
して全員が散華し、肉片が飛び散り、目を
覆わせるものがありました。

 応急員と、運搬員が、危険をおかして
重傷者から下部治療室に運び込みますが、
正視できないほどの惨状であったと
述懐していました。

 後日、この砲塔からは、怪火がみられる
という、うわさが出ていました。

 第五砲塔が吹き飛ばした破片は、第四砲塔の
側壁を突き破り、砲塔員若干を死傷させて
いました。他の敵機の爆弾は、後部の飛行
甲板に落ち、航空機3機を跡形もなく粉砕し、
甲板に火災を起こさせました。

 飛行甲板の下は、酸素魚雷が装填された
ままになっており、誘爆すれば艦は一瞬にして
破壊されることになります。

 水雷長から、「魚雷を射出放棄します。」
という進言を受け、曾禰氏は、「射出せよ。」
と断を下しました。

 火災を消すために、海水を甲板に撒水
しましたが、その海水は甲板にあふれ、
いつか熱湯となって、この処理に大いに
困ることになりました。


紹介書籍:重巡「最上」出撃せよ
著者: 「矢矧」井上芳太、「那智」萱嶋浩一、「熊野」左近允尚敏、最上:曾禰章、「五十鈴、摩耶」井上団平
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