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巡洋艦最上 艦上攻撃機の攻撃 [巡洋艦最上]

 曾禰氏は、「二度と来たら帰すまい。」と
力んでみたものの、高角砲と機銃の効果を、
待つことしかできませんでした。

 来襲した敵機の中に、機銃弾を食らって
空中分解をおこして、海上に墜落したものが
ありましたが、それを目撃した乗員は、手を
打って、快哉を叫びました。

 曾禰氏は、艦内全般に、直声で、戦況と
敵機撃墜を知らせて、士気の鼓舞に
努めていました。

 高角砲や、機銃の射手や旋回手は、
無防備の台にあり、頭上に舞い降りる
敵飛行機に懸命に照準を合わせて、
連続射撃するその余念のない、神の
ような姿を見て、曾禰氏は、操艦責任の
重みが増してくるのを感じていました。

 このような状況で、「お腹が減った」、
「眠い」という雑念は、一つもなく、時間の
概念など一切ありませんでした。


 明けて6月7日午前2時頃、護衛として
駆逐艦の朝潮と荒潮が合同しました。
曾禰氏は、夜明け30分前に、総員を
起こして、戦闘配置につかせ、警戒を
厳としました。

 昨日の夕刻、敵水上機の触接を受けて
いたので、今日も、敵機による攻撃があるに
違いないと覚悟を決め、各自戦闘配置に
つきました。そのおかげで、見張りは、
いち早く敵機の接近に気づきました。

 敵機は、空母から発進した艦上攻撃機の
ようでした。「今日の敵は、手強いぞ。」と、
曾禰氏は拳を握りしめました。対空戦闘の
号令とともに、艦は高速運転(と言っても
3ノットほど増速できるだけでした)に
移りました。

 敵機が6機ほど、折り重なるように、
最上めがけて殺到してきました。


紹介書籍:重巡「最上」出撃せよ
著者: 「矢矧」井上芳太、「那智」萱嶋浩一、「熊野」左近允尚敏、最上:曾禰章、「五十鈴、摩耶」井上団平
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巡洋艦最上 急降下爆撃 [巡洋艦最上]

 敵の急降下爆撃機は、爆弾投下点に
達すると、黒い爆弾を落として
いきました。

 曾禰氏には、頭上に吸い込まれるような
錯覚さえ感じるほど、ものすごい加速度で、
艦にめがけてきました。

 曾禰氏は、その時の高度と距離に応じて、
直感的に緊急回避操艦の命令を出しました。
半秒の狂いが命取りになる、切羽詰まった
瞬間であり、曾禰氏は、神のような姿で
号令をかけていたに、違いありません
でした。

 投弾は次々と避けられ、至近弾となって
舷側水面で炸裂しました。その直後に、
無数の弾片は、舷側や付近の構造を
破壊するものの、さいわい大事には
至りませんでした。

 敵機は、投弾すると、機銃掃射を行い
ながら、艦橋スレスレに舞い降り、身を
かわして怪鳥がにげるように遠ざかって
いきました。

 乗員は、その一瞬に、星のマークと、
若い搭乗員の緊張した顔がはっきり
見えたと言っていました。曾禰氏は、
敵の搭乗員もなかなかの度胸と技量だと
思いました。

 この日の攻撃は、命中弾もなく、至近弾
として水面炸裂したものが、3個ほどあった
だけで、大した被害はありませんでした。

 ひっきりなしの強襲で、文字通り応接に
暇がない乗員は、戦闘配置についたきりで、
休む暇もありませんでした。

 曾禰氏は、この日、戦闘配食を命じ、
昼食は、各自戦闘配置についたまま、
お握りか、パンをかじってすませました。

 この日の、艦上スレスレを、爆音を残して
去っていく敵機を見るのは、気持ちの
良いものではなく、「畜生。二度と来たら
帰すまい。」と力んでいました。


紹介書籍:重巡「最上」出撃せよ
著者: 「矢矧」井上芳太、「那智」萱嶋浩一、「熊野」左近允尚敏、最上:曾禰章、「五十鈴、摩耶」井上団平
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