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巡洋艦五十鈴 気転の煙幕。艦命を救う。 [巡洋艦五十鈴、摩耶]

 五十鈴は、右に20度ほど傾き、行き脚は
全くなく、第一缶室とおぼしきあたりからの
火災は、鎮まっていませんでした。

 しかし、黒煙の煙幕による欺瞞が成功したのか、
敵機は沈没確実と見て、視界外に去っていき
ました。敵機の心配がなくなったので、全艦
あげての消火や応急対策に専念できるように
なりました。

 爆弾は、第一缶室のすぐそばで爆発しており、
室内の機関員を全滅させ、隣の士官室一帯に
大火災を発生させていました。そのための
処置に時間がかかるものの、沈没の心配はなく、
ある程度の航行も可能だと分かりました。

 この後、乗員の一致協力により、かろうじて
危機を脱した五十鈴は、翌日の11月16日に、
ショートランド基地にたどり着くことが
できました。

 到着直後、艦隊長官から、お褒めの言葉を頂き、
ホッとした気持ちと、嬉しさのあまり、井上氏は
思わず涙ぐんで、しまいましたが、これこそ、
「気転の煙幕。艦命を救う。」の一幕でした。

 戦争のさなかなので、このような危険は
つきものでした。

(追記)
 上記は、第三次ソロモン海戦の第二夜戦からの
帰途ということになります。この夜戦で、前日に
撃沈した比叡に続き、戦艦霧島が撃沈して
います。

 この作戦は、10月に行われた金剛と榛名の
飛行場砲撃を再度行うということで実施された
作戦でした。

 金剛と榛名の飛行場砲撃の際、五十鈴も
護衛として参加し、井上氏は、飛行場の
敵機や建物が炎上する様子を望遠鏡で
見ており、思わず万歳を叫んだと
しています。


紹介書籍:重巡「最上」出撃せよ
著者: 「矢矧」井上芳太、「那智」萱嶋浩一、「熊野」左近允尚敏、最上:曾禰章、「五十鈴、摩耶」井上団平
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巡洋艦五十鈴 敵機の餌食 [巡洋艦五十鈴、摩耶]

 輸送作戦が失敗に終わり、帰途についた
五十鈴らは、敵機に狙われることになりました。

 味方は、滞空防御隊形を作って、28ノットの
戦闘速力で、ショートランドに向かって、
まっしぐらに突き進んでいきました。

 11月15日、五十鈴らは、敵機の数波に渡る
攻撃を受けました。こうなると、輸送部隊の中で、
最老齢の五十鈴は、速力の出方が思わしくなく、
少しずつ落伍していき、敵機の格好の餌食と
なりました。

 一発の爆弾が、艦室至近の海中で爆発し、
大きな爆音と一緒に船体をふるわして、黒い
煙がふきあがり、艦の行き脚も目に見えて
減っていきました。

 そして急激に五十鈴は右舷に傾き、沈没
しそうな状態に陥りました。後甲板を見ると、
盛んに火災が上っており、甲板員が、
右往左往しながら消火作業に当たって
いました。

 上空には、敵機が、五十鈴の最期を見守る
ように、飛びまわっていました。味方の艦は、
遥か水平線の彼方に白いウエーキを
残しながら、姿を消しつつありました。

 心細いことこの上ない状態ですが、これ以上
被害を出さないために、五十鈴が犠牲になるのは
定則であり、不服をいうことは禁物でした。

 井上氏は、自分の一生もこれで最期かと
覚悟しながら、応急対応に懸命になって
いました。

 すると、砲術長が、「艦が、まさに沈没
するように見せかけるために、黒い煙幕を
出したほうが良くないか。」という進言を
していました。

 井上氏は、機関指揮所に連絡し、煙幕展張は
可能だと聞き、早速艦長の許可を得て、煙幕を
張りました。まもなく、黒煙がもうもうとして
四周を覆いました。


紹介書籍:重巡「最上」出撃せよ
著者: 「矢矧」井上芳太、「那智」萱嶋浩一、「熊野」左近允尚敏、最上:曾禰章、「五十鈴、摩耶」井上団平
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