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山口多聞 攻撃隊、一路ミッドウェーへ [山口多聞]

 飛び立った攻撃隊は、9機ずつの編隊を
組み終えると、眼下の機動部隊にバンクし、
一路ミッドウェーへ向かいました。

 大編隊は雁の群れのように飛び去り、
やがて小さな点となって水平線に消え
ました。

 攻撃隊とは別に、機動部隊の上空直衛の
ために、零戦3機が発艦し、上空へと舞い
上がりました。

 高度3000mほどまで上がると、トンビの
ように旋回を始めました。空母は海原を
切り裂いて進んでいき、波しぶきが朝日に
きらめきました。

 前方左舷5km先に赤城が、左舷後方4kmに
加賀、後方4kmに蒼龍が見えました。空母の
周りには、警戒隊の巡洋艦と駆逐艦が取り
巻いていました。

 加来艦長は、双眼鏡を下げ、山口少将に、
「真珠湾攻撃を思い出しますね。」と言って
きました。山口少将は、「見事な発艦だ。
しかし、ハワイ攻撃とは違う。」と硬い
表情になりました。

 真珠湾攻撃の時は、第二航空隊の旗艦は
蒼龍だったので、蒼龍から指揮していましたが、
ミッドウェーでは、飛龍を旗艦にしていました。

 飛龍は、蒼龍型の二番艦として作られた艦
ですが、あちこちに改良がほどこされており、
同型艦には見えませんでした。

 最も違うのは艦橋の位置で、蒼龍とは逆の
左舷側にありました。艦橋が左舷にあり、煙突が
右舷側にある空母は、世界中で赤城と飛龍だけ
でした。

 この方式は、搭乗員には不評だったため、
以降の空母は右舷側に艦橋と煙突があります。
山口少将は、「ここまでは真珠湾攻撃とそっくり
だが・・・」と一抹の不安を抱えていました。


紹介書籍:山口多聞 空母「飛龍」と運命を共にした不屈の名指揮官
著者:松田 十刻(まつだ じゅっこく)
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山口多聞 攻撃隊飛び立つ [山口多聞]

 乗員は、「頼むぞ」「がんばれ」「もどって
こいよ」と喚声を上げましたが、轟音に
かき消されていきました。

 続いて、二番機が滑走していきました。
訓練では何度も目撃した見慣れた光景
ですが、実戦の場では見慣れることは
ありませんでした。

 山口少将が時刻を確認すると、午前1時半を
指していました。これは、日本時刻であり、
ミッドウェーは、20時間遅いので、前日の
午前5時半ということになります。

 発艦した零戦9機は、左に旋回しながら上空に
舞い上がり、続いて、爆弾を搭載した艦上攻撃機が
甲板端まで滑走して海上に出ると、徐々に高度を
上げていきました。

 上空に待機していた戦闘機隊は、母艦を見下ろし
ました。甲板には、飛龍を示す「ヒ」が描かれていま
した。甲板の前方には、目にも鮮やかな日の丸が
描かれていました。

 珊瑚海海戦の時に、敵空母を母艦と勘違いした
搭乗員がいたため描かれたものですが、敵機に
とっても格好の目印になりました。

 赤城、加賀、蒼龍の各空母からも、ひっきりなしに
発艦していきました。零戦は、4空母合計で36機、
97式艦上攻撃機は蒼龍と飛龍から合計36機、
99式艦上爆撃機は、赤城と加賀から合計36機
飛び立ちました。

 攻撃隊の数は総勢108機ですが、搭乗員は精鋭
ぞろいであり、攻撃隊全機が飛び立つまでに
15分ほどしかかかりませんでした。

 攻撃隊は、眼下の4空母と、護衛の戦艦
榛名と霧島、巡洋艦利根と筑摩、軽巡洋艦
長良と駆逐艦9隻から成る艦隊を見下ろし
ました。搭乗員には、磐石な陣容に見えました。


紹介書籍:山口多聞 空母「飛龍」と運命を共にした不屈の名指揮官
著者:松田 十刻(まつだ じゅっこく)
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