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山口多聞 SBD急降下爆撃機 [山口多聞]

 敵機来襲の知らせは、羅針艦橋に伝えられ、
全員が首に下げていた小型双眼鏡を目にあて、
上を向きました。

 「右艦尾、距離20km。敵機は16機。」
という報告がきました。機種は、SBD急降下
爆撃機でした。

 加来艦長は、「艦上機だな。空母からの
ものか。」と、山口少将の思いを代弁しました。
幕僚は、「ミッドウェーから飛び立ったもの
でしょう。

 友永隊が着く前に、先に航続距離の長いB17を
飛ばし、その後に急降下爆撃隊を差し向けたと
思われます。」と推論を述べています。

 SBD急降下爆撃機は、99式急降下
爆撃機に匹敵するもので、空母に搭載
されているものでした。しかし、今回は、
幕僚の報告通り、ミッドウェーから飛び
立ったものでした。

 午前4時55分、SBD急降下爆撃隊は、
南雲機動部隊の上空にさしかかり、急降下
攻撃の態勢に入りました。巡洋艦筑摩が、
対空射撃を開始しました。

 SBD9機が、飛龍の日の丸マークを標的に
突っ込んできました。「面舵一杯」という加来
艦長の命令が飛びました。

 飛龍は速度を上げ、艦首を右に傾けました。
艦橋も大きく傾き、海図台や日誌台に向かって
いた乗員が、慌てて机の上にあるものを
両手で押さえました。

 最大34ノットは出せる飛龍ですが、急カーブを
曲がるように航海しているので、30ノットが限界
でした。海水の抵抗とぶつかりあって、空母は
軋みました。何かにつかまっていなければ、
身体が飛ばされてしまいました。

 海面を切ったように波飛沫のカーテンが
上がりました。


紹介書籍:山口多聞 空母「飛龍」と運命を共にした不屈の名指揮官
著者:松田 十刻(まつだ じゅっこく)
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山口多聞 再度の兵装転換命令 [山口多聞]

 利根の偵察機が送信してきた時刻は、
午前4時28分でした。

 山口少将が報告を受けたのは4時40分
でしたので、12分も遅れていました。これは、
電文を受信した後、直すのに時間がかかって
いたからでした。

 午前4時45分、赤城から発光信号が
送られてきました。内容は、「基地攻撃は
とりやめ。艦隊攻撃に兵装転換せよ。」と
いうものでした。山口少将は、耳を疑い、
司令部は何を考えているんだと、感じました。

 艦隊攻撃から上陸攻撃用に転換したと
いうのに、元に戻せという命令でした。
加来艦長は、当惑しながらも司令部の
命令を幕僚に伝えました。

 人一倍、部下思いの山口少将は、「飛龍と
蒼龍は何とかなるし、いざとなったら陸上爆弾
でも発艦できる。しかし、赤城と加賀は、そうは
いくまい。」と、乗員を憐れむように言い放ちました。

 加来艦長も、「何を考えているのでしょう。
整備員や兵器員はたまったものじゃありません。
赤城と加賀の乗員は、疲労困憊していること
でしょう。」と、深くうなずきました。

 その時、「敵機来襲」という、防空指揮所の
見張員の声がしました。

(追記)
 防空指揮所には、方位測定器空中線、測距儀、
無線電話機送話機、12cm高角双眼望遠鏡、
8cm高角双眼望遠鏡などが備え付けられて
いました。

 そして、飛龍の羅針艦橋には、艦長が立つ前部
左寄りのところに、直径50cmほどの見張速報盤が
据えられていました。

 これは、見張指揮所が、敵機の接近状況を見て
スイッチを押すと、20km以上は青、10km以上は
黄色、10km以内は赤が点灯する仕掛けで、
概要をすばやく知らせられるものでした。


紹介書籍:山口多聞 空母「飛龍」と運命を共にした不屈の名指揮官
著者:松田 十刻(まつだ じゅっこく)
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