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山口多聞 敵空母ヨークタウン発見 [山口多聞]

 午前7時50分、零戦隊が発進し、艦上
爆撃隊が、続きました。飛龍は、敵機動部隊の
方向へ、最大戦速で、進みました。

 途中で、上空警戒の零戦17機を収容
しました。17機の内、10機は、返る母艦を
失った零戦でした。

 弾丸と燃料を積み込むと、再び、上空警戒の
ために、発艦していきました。飛龍にとって幸運
だったのは、ホーネット急降下爆撃隊が、南雲
機動部隊を発見できず、爆弾を海面に投下して
帰投したことでした。

 小林大尉率いる攻撃隊は、途中で敵雷撃機と
出会いました。零戦が対応し、零戦1機が被弾し、
1機が、弾丸がなくなったため、引き換えしました。
そのため護衛の零戦は、4機となりました。

 小林大尉は、やがて帰投中の敵爆撃機を
発見したので、追尾しました。アメリカ軍は、
飛龍の攻撃隊が、復讐の念に燃えて、戦いを
挑んでくると覚悟しており、レーダーで、攻撃隊の
動きをキャッチしていました。

 午前8時49分、アメリカ軍は、28機の戦闘機を
上空に上げました。午前9時頃、小林大尉の
攻撃隊が、敵空母を発見しました。追尾して
いた爆撃隊が所属していたヨークタウンでした。

 上空に待ち構えていたグラマンF4Fワイルド
キャットの編隊は、急降下する前に、撃ち落とそうと、
機銃を放ちながら突っ込んできました。零戦4機は
立ち向かいましたが、多勢に無勢でした。

 6機が、急降下に入る前に、撃ち落とされ
ました。空母が眼下に迫り、小林大尉は、
全機突撃と命じ、空母目掛けてダイブ
しました。

 輪を小さくしたように視界がみるみる狭くなり、
眼前の空母が大きく迫ってきました。


紹介書籍:山口多聞 空母「飛龍」と運命を共にした不屈の名指揮官
著者:松田 十刻(まつだ じゅっこく)
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山口多聞 赤城被弾 [山口多聞]

 残った赤城は、上空へ猛射を浴びせて
いました。

 敵の魔の手は、赤城にも伸び、徹甲爆弾が
飛行甲板の中央リフト付近と、左舷後部を
ぶち抜いて炸裂しました。格納庫にあった
艦上機や爆弾、魚雷が誘爆し、凄まじい
火焔をあげました。

 周囲の海域にあった三隻の空母が、
いずれも黒煙を上げ、内部で誘爆を
起こして瓦解している様子が
伝わってきました。

 山口少将は、「なんてこった」とうめき
ました。しかし、ここで気落ちしている
訳にはいきませんでした。

 「これより飛龍は敵機動部隊と決戦を
交える。攻撃隊に出撃を命じろ。航海長、
これより、第二次攻撃隊を発進せしむ。
そのように赤城に伝えろ。」と命じました。

 艦橋にいた全員が、目を真っ赤に腫らして
いました。これをみた山口少将は、憤怒の
形相から、口元を緩めました。

 極限の状況に置かれた時こそ、本の少しの
余裕が必要でした。いつもの温顔に接した
加来艦長や幕僚は、我に返りました。

 「これより敵空母を殲滅する。急げ、一刻を
争う。」山口少将は、そう命じるなり、艦橋から
飛行甲板に降り立ちました。甲板には、6機の
無傷の戦闘機と、艦上爆撃機18機が、エンジンを
唸らせていました。

 艦橋前に整列した搭乗員が必死の決意で、
山口少将を見ました。飛龍の艦上爆撃機隊長は、
小林大尉でした。零戦隊の重松大尉でした。2人は、
山口少将からあれこれ言われなくても、何を
するべきか分かっていました。

 山口少将は、「空母1隻に狙いを定めるように。
準備出来次第、友永隊を出す。」というと、小林
大尉は、「かしこまりました。」と返事して潔い
顔つきで、敬礼しました。


紹介書籍:山口多聞 空母「飛龍」と運命を共にした不屈の名指揮官
著者:松田 十刻(まつだ じゅっこく)
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