SSブログ

山口多聞 再び攻撃を受ける [山口多聞]

 2発の爆弾を交わした飛龍に、さらに
5発の爆弾が左舷近くに相次いで落下
してきました。

 水柱が連続してあがり、飛龍は、大波に
翻弄される小船のように、前後左右に
揺さぶられました。一瞬、辺りが静まり
返りました。

 頭はガンガンし、耳鳴りどころでは
ありませんでした。ドラム缶の中に閉じ
込められて、外から無数のバットで
殴られているような感覚でした。

 山口少将は、「あれが一発でも飛行甲板や
艦橋に命中したら・・・」と、背筋が寒く
なりました。しかし、これはまだ前哨戦で
しかなく、この後、決戦が始まると考えて
いました。

 山口少将は、敵機動部隊の不気味な影を
はっきりと感じていました。


 ミッドウェー基地から飛び立った攻撃隊は、
日本軍の予想をはるかに上回る熾烈なもの
でした。

 空母の退避行動が遅れれば、爆弾や魚雷を
くらってもおかしくありませんでした。南雲機動
部隊がこれほどの手荒い攻撃を受けたのは
始めてでした。搭乗員も乗員も、必死に応戦し、
疲労がたまっていました。

 午前5時9分、利根4号機から、「敵は
巡洋艦5隻、駆逐艦5隻」という電報が
届きました。利根4号機は、艦種を
見極めるために、危険を覚悟で
近づいて報告していました。

 山口少将は、この報告自体は信頼して
いましたが、巡洋艦と駆逐艦のみの艦隊など
考えられず、後方に空母がいると確信して
いました。しかし、赤城の司令部がどのような
判断をするか、分かりませんでした。

 山口少将は、自分の判断を元に、加来艦長と、
先任参謀に対して、「即刻、索敵攻撃に踏み切る
べきだと思うが、どう思うか」と問いかけました。


紹介書籍:山口多聞 空母「飛龍」と運命を共にした不屈の名指揮官
著者:松田 十刻(まつだ じゅっこく)
nice!(1)  コメント(0) 

山口多聞 零戦の交代 [山口多聞]

 弾丸を撃ちつくし、燃料もあまり残って
いない零戦が待ち兼ねたように降下して、
左側の海上を通過していきました。

 左側にある飛龍の艦橋からは、搭乗員の
顔がはっきり見えました。続いて2機が、
上空から降下してきました。

 山口少将は、手旗信号台の上に出ると、
敬礼しました。二機が一定の間隔をとり、
艦橋と同じ高さで通過していきました。
搭乗員も、返礼していました。

 1km後方で、最初の一機が切り返してきて、
飛龍を追ってきました。飛龍は、着艦しやすい
ように全速力を挙げ、右舷にある2つの
エンジンが黒煙を海面へ向けて
吐き出しました。

 後方の機銃座にいる射手が、煤煙で苦しまない
ように、機銃座の前には防煙壁が作られていました。

 零戦は、難なく着艦し、艦首の手前にある
昇降機に運ばれ、格納庫へと降ろされました。
艦尾近くにある後方の昇降機からは、代わりの
零戦が1機ずつ揚げられました。

 昇降機のチンチンという音は、普段は
逼迫した雰囲気を与える音でしたが、
猛撃を受けた後では、逆に耳に心地よく
聞こえていました。零戦3機が相次いで
発艦し、上空へと舞い上がりました。

 午前5時5分、右前方から、SBD爆撃機が、
10数機来襲しました。対空砲と機関銃が、
再び咆哮しました。機銃座の周りには、
薬莢が飛び、山のように重なっていました。

 飛龍は面舵を取り、爆弾を交わしました。
退避行動2分後、飛龍の左右の至近に爆弾が
落ちました。これまでにない至近弾でした。

 爆風の威力で、艦橋に爆風が吹きつけ、
宙を飛んできた巨大な水滴が、いくつも窓に
ぶつかりました。


紹介書籍:山口多聞 空母「飛龍」と運命を共にした不屈の名指揮官
著者:松田 十刻(まつだ じゅっこく)
nice!(0)  コメント(0) 

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。