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山口多聞 飛龍B17の攻撃を受ける [山口多聞]

 爆弾をかかえてのろくなっているSBD
爆撃機は、零戦に太刀打ちできず、
次々と後方から狙い撃ちされて、
空中で爆発したり、火を噴いて
海面に激突しました。

 「左艦首上空に敵重爆撃機(B17)来襲。」
見張員の絶叫が伝わってきました。はるか
上空をB17の編隊が迫ってきました。

 4基のプロペラが、きらきらと光って
いました。見張速報盤は、赤く点灯して
おり、10km以内であることを示して
いました。

 加来艦長は、「取り舵一杯。最大戦速。」と
命じました。飛龍は、今度は、艦首を左に
向けました。蛇行でした。右回り半円を
描いた航跡は、今度は左内側にして
旋回行動をとりました。

 両舷でさっきより数倍ある水柱が、いくつも
屹立しました。衝撃で、飛龍全体が大きく
揺れました。クレーターの底となって、深く
沈んだ海水が、反動で押し寄せて激突し、
天に向かって突き上げました。

 いくつもの大波が舷にぶつかり、水柱が
途中で壊れ、滝となって降り注いだ海水が、
甲板にあたって弾け、流れました。山口少将は、
こんなきわどい攻撃を受けたのは始めてでした。

 敵機が爆弾を投下し遠ざかっていきました。
その後、赤城から、「貴艦の被害状況を知らせよ。」
という信号が送られました。

 飛龍航海長は、黒板に「我被害なし。B17、
14機本艦上空を航過。針路270度。高度5千。」
と書き、山口少将に見せました。山口少将は、
笑顔を作りました。ひとまず、

 敵機の攻撃をかわすことができた飛龍は、
ようやく直進する事ができました。


紹介書籍:山口多聞 空母「飛龍」と運命を共にした不屈の名指揮官
著者:松田 十刻(まつだ じゅっこく)
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山口多聞 ヘンダーソン少佐 [山口多聞]

 飛龍は、回避行動をとりながら、間断なく
高角砲と25mm機銃が唸りを上げました。
バリバリと、空気が張り裂けているような、
破裂音が響き渡りました。

 1機のSBDが、翼や胴体に銃弾を受けて、
無数の小片がはがれるように周囲に飛び散り
ました。

 こらえているように飛んでいましたが、
間もなく火を噴き、錐揉みになって回転し、
艦首左舷側の海面に突き刺さりました。

 水飛沫があがり、いったん沈んだ機体が、
浮き袋の役目をする応急浮泛(ふはん)装置に
よって、海面に浮かびました。

 翼や胴体が折れて、またすぐに海水を
噴きあげて、水没していきました。
パイロットは、即死したらしく、
コックピットから脱出する姿は
ありませんでした。

 飛龍は上空から見ると、半円を描くような軌跡を
残して回避しました。急降下爆撃機から投下された
爆弾が、白波となった後席の外側に落ち、巨大な
水柱がそそり立ちました。

 飛龍の姿がすっぽりと波に隠れてしまった時、
赤城など、他の空母や艦艇、上空で迎撃していた
零戦搭乗員がやられたと思いました。

 林立する水柱が海面にドドーンという轟音と
ともに落下し、クレーターそっくりの丸い白波と化
した時、飛龍は無傷のまま現れました。赤城にいた
司令部は、「無事だった」と声を上げました。

 加賀や蒼龍から迎撃に飛び立った零戦隊が、
SBD爆撃機を撃墜していきました。真っ先に
撃墜されたのは、SBD急降下爆撃隊を
率いていたヘンダーソン少佐の機体
でした。

 この時戦死したヘンダーソン少佐を讃えて、
後にガダルカナルの飛行場に、彼の名前が
使われました。


紹介書籍:山口多聞 空母「飛龍」と運命を共にした不屈の名指揮官
著者:松田 十刻(まつだ じゅっこく)
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