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山口多聞 敵機動部隊第一次攻撃隊帰還 [山口多聞]

 飛龍を飛び立った第二次攻撃隊は、発着
指揮所にいた山口少将や、加来艦長に
敬礼をしました。

 山口少将は、大きく手を振りました。
飛行甲板の両側にあるポケットからは、
整備員や射手が手を振りました。

 全機が飛び立つと、強風が吹きつける
甲板上に駆けつけ、両手を振り回しました。
橋本大尉は、眼下の飛龍に描かれた日の丸が
手を振っているように見えました。

 あの日の丸に再び戻ることはできるだろうかと
一瞬思いました。上空には、空母一隻を炎上
させた第一次攻撃隊が旋回しながら、待って
いました。お互いに翼を振りながら、別れました。

 零戦は2機、爆撃機は5機しか確認でき
ませんでした。入れ違うように、第一次
攻撃隊が着艦態勢に入りました。

 橋本大尉は、後は帰ってこなかったかと
思いましたが、自分も散華しているかも
しれないと思い直し、今は、敵空母に
魚雷をぶつけることだと考えていました。

 前方には、友永大尉の指揮する5機が
飛んでいました。橋本大尉は、友永大尉は、
今は無我の境地だろうと想像しました。ここで、
橋本大尉は、直前に渡された報告を確認しました。

 報告には、「敵空母は、10海里ほどの
間隔で、3隻あり、それぞれが、巡洋艦や
駆逐艦10隻による輪形陣をとっている
という内容でした。

 橋本大尉は、無電を使わない空中連絡用の
小黒板に書き、風防から顔を出して伝えようと
しましたが、友永大尉の偵察要員は気づきません
でした。

 発艦地点から185km東方に向かい、そこから
北方に56kmほど行ったところで、敵空母による
輪形陣が見つかりました。


紹介書籍:山口多聞 空母「飛龍」と運命を共にした不屈の名指揮官
著者:松田 十刻(まつだ じゅっこく)
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山口多聞 第二次攻撃隊、飛龍を発艦 [山口多聞]

 山口少将は、友永大尉が第二次攻撃を
要請したことを悔いていることを、気にして
いました。

 仮に、今回のミッドウェーの攻撃が、
予定通り、真珠湾攻撃の指揮官淵田
中佐がとっていたとしても、結果は
変わらなかったはずでした。

 想定以上の防御を固めていたミッドウェーの
攻撃は、第一次攻撃だけでは不十分になる
ことは確実でした。

 しかも、第二次攻撃の要請は、淵田中佐も
したはずでした。これは、淵田中佐が
指揮したセイロン攻撃の時も、実際に
行っており、司令部は兵装転換で
あたふたしたという経験があります。

 今回の機動部隊壊滅の責任は、この時の
経験を全くいかすことなく作戦を進めた
赤城にいた機動部隊司令部にあり、
友永大尉の責任ではないといえます。
山口少将は、立場上司令部の責任とは
いえませんでした。

 山口少将は、温顔を作って、「存分に
働いてこい。」と激励しています。友永大尉は、
この日、始めて小さな笑みを浮かべ、直ぐに
思いだしたように、唇を強く吻合しました。
そして、愛機に向かっていきました。

 その時、蒼龍を飛び立った、二式艦上
偵察機が甲板スレスレに飛んできて、
報告球を投げ落としました。紅白の布が
ついた球が、甲板の上を転がりました。
整備員が慌ててつかみ、艦橋に
届けました。

 山口少将は、加来艦長と一緒にすばやく
内容を読み、「友永隊長に渡してくれ。」と
命じました。報告を渡された川口飛行長は、
まだ飛び立っていなかった橋本大尉に、
渡しました。

 第二次攻撃隊は、午前10時31分、
飛龍から発艦していきました。


紹介書籍:山口多聞 空母「飛龍」と運命を共にした不屈の名指揮官
著者:松田 十刻(まつだ じゅっこく)
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