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山口多聞 戦闘配食 [山口多聞]

 山口少将は、搭乗員の報告にあった、
敵空母は多くの艦艇によって、何重にも
囲まれているという話を思い返して
いました。

 それに引き換え、日本軍の機動部隊は、
空母間の距離が短く、護衛の戦艦や巡洋艦、
駆逐艦も中途半端でした。

 西方にいる連合艦隊の主力でもって、
空母を幾重にも囲んでミッドウェー作戦を
遂行すべきだったと考えていました。

 このことは、山本長官に伝える必要があると
考えていました。山本長官は、今頃、顔面
蒼白になっているだろうと想像しました。

 山口少将は、薄暮攻撃と決まったので
あれば、今度こそ、索敵を万全に配慮し、
早めの来襲を知らせてもらおうと、考えて
いました。

 午後1時30分、旗艦の長良に、「第三次
攻撃は、15時出発、薄暮攻撃を実施する。
水上偵察機にて、敵空母触接方取り
計られたし。」と打電しました。

 この後、戦闘配食が始まりました。通常、
握り飯と相場が決まっていますが、この時は、
五目飯の握り飯に、牡丹餅を用意していました。
艦橋には、主計長が自ら飯缶を持って、
上がって来ました。

 山口少将は、牡丹餅を頬張り、生きている
実感を持ちました。そして、「うまいな。こんな
うまい牡丹餅ははじめてだ。」と感想を述べ
ました。主計長は、照れ笑いしながら頭を
下げました。

 午後2時(日本時間)になり、太陽が西に
傾いてきました。「早く沈んでくれ。」と窓越しに
太陽を見やりました。そこに、「敵機来襲」という、
見張員の悲鳴のような声が、伝声管を通して
聞こえてきました。

 山口少将は、「先手を打たれた。」と
感じました。


紹介書籍:山口多聞 空母「飛龍」と運命を共にした不屈の名指揮官
著者:松田 十刻(まつだ じゅっこく)
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山口多聞 薄暮攻撃 [山口多聞]

 山口少将は、艦橋を降りて、橋本大尉の
意見を聞こうと士官室へ向かいました。

 士官室のドアを開けると、高いびきが
聞こえてきました。橋本大尉が、ぐったり
として、むさぼるように眠っていました。

 並みの神経では、戦場で寝ることは
できませんでした。いくら死線をかい
くぐった辣腕搭乗員でも例外では
ありませんでした。

 橋本大尉は、恐怖を感じる余裕がないほどに、
心身ともに困憊していたようでした。

 山口少将は、何もせずにドアを閉じました。
艦橋に戻った山口少将は、加来艦長や、
幕僚に、「搭乗員は、そうとう疲れている
ようだ。どう思うか。」と尋ねました。

 参謀は、「搭乗員の報告では、敵は輪形陣を
組んだ機動部隊の防御砲火は熾烈だったと
言っています。このまま突撃しても、戦果は
あまり期待できないでしょう。」と言いました。

 そして、薄暮攻撃にしてはどうかという案が
出されました。山口少将も、それなら疲れも
取れるだろうと考え、戦闘配食をするように
命じました。

 ただ、戦闘配食は、副長がすでに手配して
おり、山口少将の命令は不必要でした。

 山口少将は、戦争の常識である、「兵は拙速を
尊ぶ」という格言を信条にしていました。仕上がりは、
少々下手でも、やり方が早い方が戦果を期待
できました。

 特に、今回の海戦では、万全の準備をしてから
行うという作戦のために、大きな被害を出しており、
策に溺れたといっても過言ではありませんでした。

 山口少将は、第三次攻撃を薄暮攻撃にした
ことで、取り返しのつかない事態を招くことも
ありえると思いましたが、足腰も立たない
搭乗員がいる中では、仕方ないと
考えました。


紹介書籍:山口多聞 空母「飛龍」と運命を共にした不屈の名指揮官
著者:松田 十刻(まつだ じゅっこく)
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