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山口多聞 友永大尉、艦橋に上がる [山口多聞]

 負傷していた角野大尉の艦上機が、甲板上で
半回転して止まった直後、整備員が駆けつけ、
開いたままの風防から、角野大尉を抱き
起こして、引きずりだし、担架に載せました。

 同乗していた偵察員や電信員も声をかけ
ましたが、角野大尉は、失心していました。
13mm機銃で撃たれた右足首は血で
染まっていました。

 にもかかわらず、片足で飛行し、着艦まで
こなしていました。神業としか、言いようが
ありませんでした。山口少将は、気絶したまま
担架で運ばれてゆく角野大尉の姿を見ながら、
強靭な精神力に感服していました。


 午前6時15分頃、赤城、加賀、蒼龍、飛龍の
4空母は、上空警戒の零戦以外、攻撃隊をほぼ
収容しました。今は一刻を争うので、使い物に
ならない航空機は、海上に投棄することに
しました。

 攻撃隊を率いた友永大尉が、艦橋に上がって
きました。山口少将は、労いの言葉をかけて
います。死線を潜り抜けてきた勇士に対し、
どんなことがあってもまずは敬意を払わなければ
なりませんでした。

 相手の行動を讃えてから、糺すものは糺し、
反省すべき点を指摘すればよいというのが、
山口少将の方針でした。

 戦況報告をする友永大尉の表情は、悲壮感に
あふれており、責任を痛感しているようでした。
山口少将は、あまり自分を責めすぎると、正しい
判断ができなくなると思っていたので、友永大尉を
慰め、鼓舞しています。


紹介書籍:山口多聞 空母「飛龍」と運命を共にした不屈の名指揮官
著者:松田 十刻(まつだ じゅっこく)
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山口多聞 上空待機していた艦上機 [山口多聞]

 山口少将は、赤城司令部にいる源田参謀が、
ハワイ攻撃のときと同じように、急降下爆撃機と、
水平爆撃機、雷撃機に護衛の戦闘機隊をつけた
万全の構えで臨むつもりだと、みていました。

 しかし、今は、ハワイ攻撃でもなければ、
セイロン攻撃でもなく、敵機動部隊が近くに
いることが分かっている海戦でした。

 攻撃は最大の防御であり、艦上機が勝敗を
左右する機動部隊同士の戦いでは、先制攻撃
した方に勝機がありました。

 ミッドウェー空襲から帰還した攻撃隊が、
いつもより短い間隔で、母艦への着艦を
続けました。

 甲板に揚げられていた艦上爆撃機が、
格納庫へと輸送され、上空で旋回していた
攻撃隊が、すばやく甲板に降りて、格納庫に
降ろされました。

 どんなに大きな空母であっても、数千mから
見下ろせば、大海に浮かぶ木の葉のように
小さくみえます。搭乗員にとって空母は、
かけがいのない我が家のようなものであり、
上空で計器を見ながら待機させたれるのは、
心細くなっていました。

 待機していた航空機の中に、ふらつくように
飛んでいた艦上攻撃機がありました。飛龍の
艦上攻撃機を率いていた角野大尉でした。
角野大尉は、負傷していました。

 無線でそのことを知っていた飛龍搭乗員は、
飛行甲板に担架を用意して、着艦を待ち
受けていました。しかし、進入角度を制御
できず、2回甲板の上を通りすぎました。

 3度目に、艦尾付近に尻餅状態で着艦し、
バウンドしながら制動索にフックを引っ掛ける
ことができました。

 艦上攻撃機は、甲板上で半回転して止まり
ました。この様子を見ていた山口少将は、
胸をなでおろしました。


紹介書籍:山口多聞 空母「飛龍」と運命を共にした不屈の名指揮官
著者:松田 十刻(まつだ じゅっこく)
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