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山口多聞 加来艦長、山口少将の訓示 [山口多聞]

 加来艦長は、第二次攻撃隊に対し、「無傷の
空母が2隻残っている、どちらか1隻に致命傷を
与えて欲しい。我が機動部隊の仇をとってくれ。
諸君の武運を祈る。」と、訓示しました。

 赤城、加賀、蒼龍は炎上し、黒煙が空を
焦がしていました。加来艦長の目には、
その光景が映っていました。隊員は、
後ろを見ようとはしませんでした。

 飛龍は、敵機動部隊に向かって、進撃しており、
炎上する空母から遠ざかりつつありました。今、
飛龍についてきているのは、2隻の駆逐艦だけ
でした。

 続いて、山口少将が、「大変な作戦となる
だろうが、みんな力を合わせ、頑張ってくれ。」
と、一人一人の顔を脳裏に焼き付けるように
見つめました。

 搭乗員が、白いマフラーをなびかせ、間合いを
とって、一斉に敬礼しました。踵を返し、両脇に
肘をつけて、駆けてゆきました。甲板上では、
整備員が、数人がかりで、機体を支え、チョークを
外すため、翼の下に、2人ずつしゃがんでいました。

 友永大尉が、山口少将の前に歩いてきました。
そして、「司令官。色々とご迷惑をおかけしました。」と、
腰をくの字に折、バネのように、もとの直立姿勢に
戻りました。

 山口少将は、「こちらこそ感謝している。」と
返答しました。山口少将は、友永大尉が、死を
覚悟していることを悟りました。ここで、生きて
帰ってこいと言っても、笑みを浮かべて返事
しないだろうと直感しました。

 友永大尉は、自分が指揮したミッドウェー攻撃が
不首尾に終わり、第二次攻撃を要請したことが、
機動部隊壊滅につながっていると、悔いている
ようでした。


紹介書籍:山口多聞 空母「飛龍」と運命を共にした不屈の名指揮官
著者:松田 十刻(まつだ じゅっこく)
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山口多聞 友永大尉の覚悟 [山口多聞]

 攻撃隊指揮官の3人は、艦橋のラッタル
(梯子上の階段。軍艦内は、空き空間を
有効利用するため、幾種類のラッタルが
用意されていました)を降りていきました。

 飛行甲板に降りてきた友永大尉に、艦上
攻撃機の整備班長が近づいてきました。
「右翼タンクの被弾箇所は修理に時間が
かかるので、燃料を積むことができません。」
と報告してきました。

 友永大尉は、「燃料は片翼あればいい」と
返答していますが、「それはできません」と
血相を変えて言ってきました。片道でいいと
聞き違えたようでした。

 友永大尉は、ミッドウェー攻撃時、一緒に
乗っていた橋本大尉から、飛行機を変えて
参加するように勧められていましたが、友永
大尉は、今は一機でも必要な時期で、魚雷を
見舞ったら直ぐに帰還すればいいので、
左タンクだけで充分と返答しています。

 橋本大尉は、雷撃機は、戦闘機にやられない
ように一撃秘中で攻撃し、あとは一心不乱に
帰還するしかなく、それであれば、胴体と
左タンクのみで帰還は可能でした。なので、
橋本大尉は受け入れていました。

 一方で、友永大尉は、戻ってこれないだろうと
覚悟していました。死に急ぐつもりはないものの、
ここが死に場所になりそうな予感がしていました。

 今回の出撃では、友永隊が、第一中隊5機、
橋本大尉が、第二中隊5機を率いることに
なりました。

 艦橋前の飛行甲板前に全員が整列し、発艦
準備が整ったとの報告を受け、艦橋から、
山口少将と、加来艦長が降りてきました。
最初に、加来艦長が訓示しました。


紹介書籍:山口多聞 空母「飛龍」と運命を共にした不屈の名指揮官
著者:松田 十刻(まつだ じゅっこく)
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